1ホールに「2つのグリーン」があるのは日本だけだと思っていい。ゴルフという競技は、ティーグラウンドから最終的なターゲットとなるグリーン上の108ミリのカップまでの行程を楽しみ、結果を争うものだからこそ、グリーンが2つあること自体、ゴルフの世界常識では異常なことだ。
 実は、この「2グリーン」は日本独自のゴルフ文化。当初、ゴルフ場というのは1グリーンが当たり前だったが、1955年(昭和30年)に東京ゴルフ倶楽部が本邦初のウインターグリーン、いわゆるサブグリーンを作ったのが2グリーンの始まりとなっている。というのも、日本という国は年間の気候の変化が激しいため、真夏と真冬では気温も湿度もかなり違ってくる。そのため、1種類の芝で造ったグリーンだけでは管理が難しいため、品種の違う芝でもう1つグリーンを造ったのだ。これが気候変動の大きい本州のコースに広まって多くのコースが高麗芝とベント芝の「2グリーン」を造った。なお、北海道のように通年で涼しい気候の場合はベント芝の「1グリーン」が多い。
 グリーンが2つあれば、一方を使っている間に、もう一方を休ませて養生でき、整備も可能。そうすれば、芝の育成や管理上の負担が軽くなり、さらに農薬も少なくて済むことになる。特に日本で2番目にゴルフ場が多い千葉県は農薬の使用に関する条例が厳しく、その使用量を減らすために2グリーンが多くなったようだ。
 ここで問題になるのがルール。サブグリーンに対しての認識だ。1ホールにグリーンが2つある場合、使用していないグリーンは2011年までの規則では、特にローカルルールで規定されていない限りスルーザグリーンとして扱っていた。しかし、2012年の規則改訂によって予備グリーンは目的外のグリーンとして扱われることとなり、競技委員会は「①プレー禁止の修理地」とするか、「②スルーザグリーンとしてあるがままの状態でプレーする」かを選べるようになったのだ。
 この「2グリーン」には多くの混乱があった。2000年のVISA太平洋マスターズでは、セルヒオ・ガルシア(スペイン)が最終日の最終18番でサブグリーンにオンした2打目をグリーンの外にドロップしてプレー。しかし、ホールアウト後、競技委員会は「あるがままにプレーしなかった」として2打罰を科された。また、逆に、2004年のミズノクラシックでは、宮里藍が2日目にパー3の3番ホールでサブグリーンに乗ってしまったボールを〝あるがまま〟にプレーしたところ、同伴競技者のジル・マギル(米国)が「規則違反」と指摘した。LPGA競技委員会は、宮里が「プレーヤーの球が目的外のパッティンググリーン上にある場合、プレーヤーは球をあるがままの状態でプレーしてはならない」という規則25-3に違反したとして2打罰を科した。これも2グリーンのなせる業。だが、そんな日本独自文化も、芝の品種改良が進み、国内の60%のコースが1グリーンに改修されている。

 

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 ◇古賀 敬之(こが・たかゆき)
1975年、報知新聞社入社。運動部、野球部、出版部などに所属。運動部ではゴルフとウィンタースポーツを中心に取材。マスターズをはじめ男女、シニアの8大メジャーを取材。冬は、日本がノルディック複合の金メダルを獲得したリレハンメル五輪を取材した。出版部では「報知高校野球」「報知グラフ」編集長などを歴任。北海道生まれ、中央大卒。

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