ゴルファーなら生涯に一度はやってみたいエージシュートをなんと145回もやってのけたゴルファーがいる。田中菊雄さん(北山グループ取締役会長)、81歳だ。10年前の2006年、71歳で初めて70をマークしエージシューターになると、77歳までに計10回。その後、トシを重ねても衰えを知らず79歳で54回に到達。さらに80歳となった2015年には年間50回と加速、計104回の大台へ。そして81歳の今年はその回数を合計145回と更新中だ。「この調子だと200回まであと1、2年でしょう」と意気軒高の田中さん。記録はすべてコースの証明書付き。生来の律儀な性格からノータッチ、オーケーパットなしのラウンドだ。ギネスブック登録も視野に快挙に向けてひた走っている。

 

エージシュート145回を誇る田中菊雄さん

エージシュート145回を誇る田中菊雄さん

 記念すべき第1号は2006年夏、静岡・富士国際GC富士コース(パー72)で生まれた。71歳のとき34、36の70ストローク。エージシュートに1アンダーと1打余裕の快挙だった。

2回目は73歳の08年、東京・桜が丘CCで72、次いでホームコースのよみうりGCで73が出た。以来エージシュートは毎年、記録している。「周囲がよろこんでくれるしラウンドに張りと目標ができた。アウトを42、3で回るとチャンス、インで30台が出せればエージシュート達成となる。ゴルフに粘りが出て面白くなった。逆に良いスコアで折り返しながらしびれて苦渋をなめることの方が多かったが、1打の恐ろしさがわかっていると苦にならない。ゴルフが本当に好きになりましたね」―

 

 「仕事もゴルフも不可能を可能にしてくれるから大好き」

 

 神奈川・川崎市に本社がある北山グループ取締役会長の田中さん。不動産、食品など4社をまとめるグループ会社の総帥だ。

 島根県出身。上京して苦労の末、東京、川崎を拠点に不動産業を起こした。農地をマンションに転用するなどの仕事が軌道に乗り35歳でゴルフを始めた。土地転用に協力してくれた大家さんたちにゴルフを進め一緒に楽しんだ。内装工事やリフォーム、食品会社など次々と起業、以来、仕事とゴルフは表裏一体、人生の伴侶となった。「ゴルフは会社経営と同じ。不可能を可能にし、その逆も起こるがはねかえしていく。仕事もゴルフも同じ。エージシュートを意識するようになってゴルフをおろそかにプレーしなくなりました」―エージシューター人生は仕事があっての産物だ、と真剣に取り組む毎日だ。

 

 78歳になると俄然ペースが上がった。16回も快挙を達成した。ゴルフ日本シリーズで知られる東京よみうりCCのクラブ競技を73で回ったのが自信になった。当時ハンデ6。ベストグロスだった。78歳で73、エージシュートのおまけつきの快挙にみんなが記念植樹で祝ってくれた。

 

 79歳となった2014年は年間で28回を数えた。ハイライトは同年10月の東京よみうりCCの会場記念杯での78。大快挙である。コースの“誕生日”を祝う大会には168人、バリバリの若手の現役が多数参加する中で78。距離は若者でも苦労するタフなチャンピオンティーを使用していて価値があった。いまでもよみうりCCではそのときの話に花が咲く。すると田中さんにギャフンと言わされた若者たちが「あの人は怪物だよ」うれしそうに言うのだそうだ。

 

 2015年3月、80歳になるとエージシュートは実に年50回を数えた。これでお気づきだろう。田中さんの戦歴は誕生日から誕生日がカレンダーとなっている。エージシューターは誕生日が新年度である。この日程にこだわるようにならないと本当のゴルファーとは言えないようだ。

 

 「ノータッチ。完全ホールアウトでスコアにこだわる」

 

 81歳になった2016年の4月20日、田中さんはエージシュートぐるみの快挙をまたもやってのけた。東京・五日市CCで開催された関東ゴルフ連盟公式戦の「関東グランドシニア選手権予選」で81のエージシュートを達成、本選の出場資格を81歳の最年長で突破したのだ。70歳をもって出場できるグランドシニア選手権大会で81歳の大ベテランが並み居る若者を後目に予選突破だ。長い歴史を誇る関東ゴルフ連盟で初の快挙だった。

 

 トシを重ねると体力気力の衰えが気になるが、逆だ。田中さんのスコアは年齢に比例するように高度安定している。78歳で16回、79歳28回、80歳50回、81歳の今季は来年の誕生日まで8か月も残す9月5日で、早くも41回である。加齢はスコアの妨げになっていないのだ。断わっておくが、ティーグラウンドはレギュラー(白)ティー。田中さんの“エージシューター・ツアー”の大会規則だ。月例など公式競技はチャンピオンティーだ。ゴールドティーは使ったことはない。

 

 「トシが増えたらゴルフがうまくなっていきました。やってみて実感する。芝の状態がよくないと6インチプレース、パットのワングリップOKはだめ。ノータッチ、完全ホールアウトの精神をもってエージシュートの回数にこだわる。すると想像力が高まり、深みというか、ゴルフのたのしみが広がるようだ。人間って素晴らしくできているのです」

 

 次回からその驚きのゴルフライフを徹底リポートする。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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