ゴルフの求道者。ゴルフの魅力にとりつかれ、寄る年波による衰えに抗しながら年齢と同じか、それ以下のスコアにこだわる田中さんは、まさに求道者と呼ぶにふさわしいゴルファーだ。その取り組みにはプロアマ問わず老若男女、あらゆるジャンルの職業にたずさわるゴルファーの共鳴者がいて驚くほど周辺はにぎやか。
 いずれもエージシュートという稀有な体験を200回以上もやってのける田中さんに引き寄せられた人びとだが、実は田中さんにとってはこの人たちの存在こそ、ゴルフを支える原動力。田中ゴルフを支える仲間との交流を拾いあつめるとそのゴルフの強さ、したたかさが見えてくる。

3男の田中雄三さん(左)と田中さん(右端)

3男の田中雄三さん(左)と田中さん(右端)

 

 2017年2月末、3男の田中雄三さんとのラウンドがよみうりGCであった。最も厳しい季節、田中さんの調子は悪くショットは乱れた。3ホール目を終わると雄三さんはつぶやいていた「今年初めて回ったが、これではエージシュートは無理だ」。神奈川・相模原CCのハンデ1。3人の息子の中でもトップハンデのアスリートゴルファーだ。遠慮のない言葉が飛んだ。
 「左グリップ3本をゆるめてスイングしていませんか。コースでスイングを作った人が、スイングを頭の中で作ろうとして自分を変えてはいませんか。自分が何者か忘れてはだめですよ」“自分のゴルフをしなさい!”の叱咤だった。

 

 ティーショットを右林、そこから脱出に手間取ってグリーンエッジ、5メートルのダブルボギーパットはどうにか、カップインさせた。すると「ナイスダボ」と雄三さん。「左指3本をしっかり締めてパットしましたよね。スイングも3本を緩めたらだめということですよ。これでわかったでしょ。誰でもエージシュートできないのだから、忘れなでくださいよ」“そうしたことがわかっているからエージシューターなんだ”“コースで作ったスイングを絶対にかえないでください”-身内だからわかる貴重なアドバイスだった。

 

 日ごろから「左グリップ3本をしっかり締め左甲を上に向けバックスイングを反動つけてあげる。それぐらい勢いをつけてあげないとスイングはどんどん小さくなる」と言い続け実践する”田中ゴルフ“だ。そのスイングメソッドは親から子へ、そして、こうして子から親へと還元する。
 40歳代の息子はタイガー世代。ハイテククラブを駆使した近代スイングのトップアマだ。親は逆Cの字スイングを経て、独自の右45度スタンスを編み出した驚きのエージシューター。子は育てられた親に「自分が何者かを忘れてはだめですよ」と諭しホールアウトすると「どう?いい感じ戻った?思い出した?」と聞くと親は「ウン」と、素直にうなづいた。間違いなくゴルフは伝承のスポーツだ、と感じた。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。

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