エージシュートは、ついに1436回に達した。8月31日、東京よみうりカントリークラブを46,42の88。年齢の89歳を1打しのぐ見事なアンダーエージシュートだった。田中さんの初エージシュートは、2007年8月29日、71歳の夏。そう、静岡・富士国際GC富士コースを70で回って以来、ひたむきに“エージシュート道”を歩んで19年が経った。
改めてその足取りに思いをはせる。77歳までの7年間で数えたエージシュートは10回。78歳で初めて年間2ケタの16回、79歳で28回、80歳で50回、81歳では81回、さらに82歳では90回。加齢とともに数は増えた。
83歳、エージシュートは年間で初めて100回越えの125回、84歳時、122回と年間3ケタの“驚きの世界”へ。そして、85歳時に218回、86歳で246回と急増、87歳の2022年3月24日、ついに通算1000回の大台へ乗った。87歳と14日のことだった。いまエージシュートは1436回。目標とする今季の目標1500回まであと64回に迫ったが、今のペースなら、大幅な進展が期待される。
実はその前々日の8月29日、田中さんとよみうりゴルフ倶楽部を3週間ぶりに回った。同コースは田中さんがエージシュートを600回越えする得意コースだ。その日、87で1435回目をゲットして迫力だった。充実ぶりに舌を巻いた。田中ゴルフの記念すべき迫力のエポックラウンドにしびれたことだった。
ラウンドは、台風10号が九州・宮崎に居座り、盆休みの太平洋岸は雨前線に覆われ太平洋沿岸は関西から東京まで大雨を急襲させ 途中1時間クラブハウスに“避難する”といったアクシデントを伴ったが、エージシュートをものの見事に達成して一味違った。
こんなことがあった。インスタートの前半を42で回った午後、調子が狂った、アウト5番打ち上げの難易度1番の5番パー4、ティーショットを右林深く入れトリプルの7、さらに7番パー5ではまさかのダブルボギーでエージシュートは大ピンチ。しかし、上り8番をパー、難ホール9番をボギーで45、計87、エージシュートに2打余裕はさすがだった。
「田中さん、スイングが変わりましたね。球がゆっくりと飛んでいきます。風格がある球筋、安定感と品があります」僭越ながら、思った通りを口にすると「インパクトでボールに向かってストンとクラブが落ちてくれる。無理打ちしなくても球が打てる。インパクトを意識してたたかずクラブヘッドを落とす感覚で打てていますね」満足げな答えが返ってきた。おっとりとした表情が好調を裏付けていた。
雨でプレー中断していったん引き上げたクラブハウスで、米大リーグリーグで大活躍の大谷翔平が「43本塁打、43盗塁」の偉業達成を知った。強打者にして機敏性を備えた者こそ真のアスリートと賞讃する奥深さを持つアメリカの野球界の奥深さに触れてうれしかった。が、ゴルフ界に転じて“深さ”を探った時、年齢と同じか、それ以下のスコアを良し、とするエージシュートを価値あるゴルファーの“勲章”とするかどうかは、現状では疑問符が付く、「エージシュート?年寄りの遊びでしょう~」と言っているようでは、ゴルフ文化は育たない。田中さん、めげずに頑張って!
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。89歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。