秋、田中さんのエージシュートは1468回に達した。10月10日。よみうりGCを、田中さん、筆者、そして、女性メンバーの福澤晴子さんと3人でラウンドした。福澤さんとは以前も何度かご一緒しておなじみ。田中さんは女性陣にめっぽうやさしく、キャディさん、コースの茶店の店員さんらに大人気。周辺には和やかな交流がいつもあっていい雰囲気だ。この日も、そんな中、アウト46、イン40の86。89歳は年齢に3アンダーのエージシュートを見事達成した。
田中さんのラウンドを同組で間近に見て迫力だった。アウトの1番をパー発進、2番から5連続のボギー、7、8番はダブルボギーを2連発、さらに9番ボギーとなって46とスコアを崩しても“エージシュート競技”だ。インを43で回れば文句なし、「89歳が89で回って何が悪い、わははは…」と堂々と威張っていられるのだ。愉快ではないか。威張っていられるのがエージシュートだ。
勝負のイン。この日、田中さんは4ボギーをたたいたが、パーを5個。40の好スコア、エージシュートに3アンダーで喝采を浴びた。愉快じゃないか。いや、実に愉快だ。
インコース序盤の12、13番とボギーが連続し予断を許さない展開。上り5ホールにすべてがかかった。打ち上げの14番、打ち下ろしの15番でパーをとった。そして16番は難易度3番目の難ホールも見事グリーンオンしてパー、3連続のパーはさすがだった。17番をボギーとしたが、最終ホールもパーとしてイン40。89歳はエージシュートに3アンダー、見事アンダーパー・エージシュート達成となった。会心のフィニッシュに自信も取り戻せた。
「今の調子なら今季目標とするエージシュート1500回は時間の問題。年内には達成したい。早ければ11月、遅くとも12月には達成できるといい」と、目を輝かせた。1500回エージシュートは今季、快調なゴルフを見受けるに達成しそうな勢いだ。
1935年(昭和10年)3月3日生まれの田中さん。89歳時のラウンド数とエージシュート数を列記する。以下の通りだ。3月は29ラウンドをこなしエージシュートは24回。(注、3月1日の88歳時のラウンド数とエージシュートは省く)4月、26ラウンドで23回。5月28ラウンドで19回。6月29ラウンドで22回、7月29回ラウンドで27回だ。さらに8月は28ラウンドで24回、そして9月はなんと1日も休まず30ラウンドをこなし26回のエージシュート達成は見事の一語に尽きる活躍である。そしてエージシュートは頑健な体力あっての結晶であることに気が付くだろう。
エージシュートは老ゴルファーの専売特許、とさげすむ向きもいると思うが、エージシュートに取りつかれ達成するためにラウンド回数を増やすという田中さんの“計算”は、それはそれですごいことである。エージシューター、田中さんは71歳のとき70で回り初エージシュートに取りつかれた。かつてエージシュートといえばオーケーありのお遊びゴルフ全盛の一種でしかなかった。が、田中さんはこの世界に入ってからはオーケーなしの完全ホールアウト、6000ヤードを越える白ティ仕様のヤーデージで厳しく競技に徹して今がある。89歳は、だから心身健康、身体頑健である。89歳の“超ベテラン”の心技体の充実は年を重ねるほどに効果が出る。心技体の差が顕著に表れるエージシュートは、だから田中さんの上に栄光をもたらすと結論する。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。89歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。