
松山英樹
男子ゴルフの2025年4大メジャー初戦、第89回マスターズは4月10日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7555ヤード、パー72)で開かれる。米ツアー通算11勝で、2021年大会王者の松山英樹(33)=LEXUS=は、12年連続14度目の出場で4年ぶり2度目の大会制覇を目指す。「ゴルフの祭典」開幕を前に、松山の過去13度の挑戦の歴史を大会ごとのコメントなども交えて振り返る。【後編】では、2018年から24年までの7大会を取り上げる。
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▼2018年4月 宮里優作、池田勇太、小平智と日本勢4人で出場。前年の結婚後、妻子が初観戦に訪れた第1ラウンド(R)は、73で首位と7打差の29位発進。第2Rは左手痛が再発して71で18位へ浮上。第3Rは計33パットとグリーン上で苦しみ、72と伸ばせず21位に後退。それでも最終Rは、日本人歴代最多に並ぶ4度目の60台となる4バーディー、1ボギーの「69」をマークし、通算3アンダーの19位で終えた。「けがした中でもできることをやった成果。しっかりとしたものを作らないと、やっぱりここでは勝てない」と受け止めた。
▼2019年4月 小平智、今平周吾、アマチュアの金谷拓実と日本勢4人で出場。前週、風邪をひいて寝込んだ影響で第1Rは生命線のショットが不調で75で首位と9打差63位と出遅れ。ショットが上向いた第2Rは70で46位へ浮上。1983~86年の中嶋常幸の記録を1年更新する、日本人歴代最長となる5年連続の予選突破を果たした。第3Rは8バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの「68」で25位へ浮上。復活優勝を遂げたウッズが会場内に大歓声を呼ぶ中での最終Rは72と伸ばせず、日本勢最高の32位で終えた。大会を通じてショットが不安定で「残念ですね。1月から感覚的なズレはなかったのに、ここにきてズレてしまったのが一番悔しい」と悔しがった。
▼2020年11月 新型コロナウイルスの影響で、大会初めて秋&無観客での開催。日本の賞金王・今平周吾と2人での出場。第1Rは5バーディー、1ボギーの「68」。自身予選R初の60台で、首位と3打差10位と大会自己最高発進を決めた。第2Rも4バーディー、ボギーなしの「68」をマーク。1991年大会第3R&最終Rの中嶋常幸に続く日本人2人目となる2日連続の60台で、1打差6位で決勝Rへ進出した。第3Rは4バーディー、4ボギーの72で8打差の10位へ後退。最終Rも72と伸ばせず、通算8アンダーの13位で終えた。初めて前週大会に出場して2連戦で臨むなど、調整方法を例年と変えて、予選Rでは優勝争いに加わった。「うまくいったところもあり、悪かったところもある。結果としてすごく悔しいですけど、いい一週間だったなと思います」と総括した。
▼2021年4月 コロナ禍で例年4万人のパトロン(観客)が数千人程度に制限され、マスクを着用する中、日本人唯一で10度目の出場となった。第1Rは前週、同じ会場で開かれたオーガスタナショナル女子アマチュア選手権で、日本人初優勝した梶谷翼に刺激を受けて「僕も続けるように」と1イーグル、2バーディー、1ボギー、の3アンダー69で4打差とメジャー自己最高の2位で滑り出した。第2Rも終始にこやかで精神的な落ち着きも見せて1イーグル、2バーディー、3ボギーの71で通算4アンダー。日本人大会最多となる通算6個目のイーグルを13番で奪い、3打差6位で決勝ラウンドへ。第3Rは雷雨による1時間17分の中断をはさみ1イーグル、5バーディーで日本人歴代最少の「65」をマーク。通算11アンダーで4打差の単独首位に躍り出て、日本男子悲願のメジャー制覇に王手を掛けた。最終Rは4バーディー、5ボギーの73でまとめて通算10アンダー。2位のシャウフェレ(米国)に1打差で逃げ切り、グリーンジャケットにアジア人で初めて袖を通した。高知・明徳義塾高、東北福祉大の後輩・早藤将太キャディーとのコンビでつかんだ初勝利。松山はメジャー通算33度目の挑戦で、1932年から始まった日本男子初の4大メジャー制覇の歴史的快挙を成し遂げた。マスターズの永久シードも獲得。早朝の日本列島を感動で包み込み「緊張しっぱなし。今までは日本人にはできないんじゃないか、というのがあったかもしれないが、覆すことができたと思う。テレビを見ている子供たちが5年後、10年後にこの舞台に立って、争えたらすごく幸せ。勝ったことによって、これから日本人(選手)がすごく変わっていくんじゃないか。日本人でもできるということが分かったと思う」などと満面の笑みで喜びに浸った。
▼2022年4月 前年覇者として参戦。東北福祉大の後輩・金谷拓実、アマチュアで初出場の中島啓太との大会前の練習ラウンドから、ディフェンディングチャンピオンはパトロン(観客)から喝采を浴びる。大会前の公式会見では「(3月に発症した首痛で)心配はあるけど、今年もいいプレーができるように頑張りたい」と大会4人目の連覇への意欲を語った。歴代優勝者が集う「チャンピオンズディナー」にグリーンジャケットに身を包んで初出席。ホスト役として和食中心に刺身と握り寿司や焼き鳥、A5ランクの宮崎和牛のリブアイなどを提供して絶賛された。前週大会を首痛で棄権して状態に不安が残る中、第1Rは3バーディー、3ボギーのイーブンパー、72で回り、5打差19位のスタート。第2Rは4バーディー、1ボギーの69。5打差2位で、尾崎将司と並ぶ日本人歴代最多10度目の予選通過を成し遂げた。第3Rは、強風で気温が真冬並みに下がり2バーディー、5ボギー、1ダブルボギーの77と失速して11打差の14位へと後退。最終Rは5バーディー、5ボギーの72。通算2オーバーの14位で終えて、10アンダーで初優勝したシェフラー(米国)に閉会式でグリーンジャケットを着せた。「(首痛で)1か月くらいまともにゴルフが出来ず、体力的にというより精神的にしんどかった。(今大会は)なかなか思うようなプレーができなかった。もう少し優勝争いに絡みたかった。また外に持ち出しできるように頑張りたい」と再起を誓った。
▼2023年4月 前年の日本ツアー賞金王で、東北福祉大の後輩・比嘉一貴と2人での出場。首痛と手首痛を抱える中で、第1Rはフェアウェーキープ率100%で2バーディー、1ボギーの1アンダー、71。前週からの雨でグリーンが重くパットで苦戦も6打差26位発進。第2Rは強風が吹き荒れ、17番では巨松が3本倒れるなど大荒れとなって8番までのプレーで日没順延に。翌日と合わせて4バーディー、2ボギーの70にまとめて、9差16位で日本人単独最多11度目の予選突破を果たした。第3Rは雨で気温が前日から10度も下がり、12番までのプレーで日没順延。2日連続サスペンデッドの厳しい状況下でも、首にもテーピングをしながら我慢し5バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの70で6打差5位へと浮上した。計25ホールを回った最終日。最終Rはグリーン上で苦しみ2バーディー、5ボギーの75と伸ばせず。優勝者のラーム(スペイン)とは10打差、通算2アンダーの16位で終えた。「アイアンショットは総じてずっと悪い。今週は(グリーンの)スピードをつかめなかった。良い状態で4日間プレーできていないのが悔しい。早く練習も制限なくできるようになれば。まず体のメンテナンスを良い形にしたい」と振り返った。
▼2024年4月 久常涼と日本人2人での出場。第1Rは悪天候でスタートが2時間半遅れ、日没順延に。風速8メートルの強風の中で1バーディー、5ボギーの4オーバー76でトップと11打差の68位と出遅れた。2度の3パットを含む33パットとグリーン上で苦戦。第2Rは3バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの74で、通算6オーバーの50位で決勝ラウンドへ進んだ。10年連続12度目の予選通過は、ともに自身の日本人最多記録を更新した。第3Rは4バーディー、3ボギーの71で通算5オーバーの28位へ浮上。パット数は全体1位の25パットと復調した。最終Rはティーショットが左右に曲がって1バーディー、3ボギーの74とスコアを落とし、通算7オーバーの38位で終えた。フェアウェーキープ率35・71%は最下位で「苦しいゴルフだった。優勝できなかった以外は何もない」と厳しい自己評価を下した。