税別で5万4000円もするパターが売れに売れている。キャスコが3月に新発売した「Red9/9」で、この記事を読んで注文しても手元に届くのは10月になる。ゴルフ用品としては異例の色、赤が全身に使われたパターは、正しいアドレスを導き、スコアアップを助ける。(武山 雅一)
「赤」ありきだった。キャスコ経営企画室営業戦略グループの渡部洋士グループ長は「Red9/9」の開発背景に関し「世の中にないパターを作ろうというコンセプトで市場にない見た目を意識しました」と、ヘッドの素材や形状より、まず色を先に決めたという驚きの事実を明かした。
同社はこれまで、ソールがイルカの形をした大ヒットウェッジ「ドルフィンウェッジ」や蛍光材を使ったボール「KIRAボール」など、ユニークでありながら品質の高い商品を送り出してきた。今回もひとつのアイデアから本腰を入れた開発が始まった。
ヘッドはオーソドックスなピン型に。形状は、正確なパッティングには正しいアドレスが必要との考えからデザイン。「利き目が右の人でも左の人でも正しく構えられるよう」(渡部氏)、センターシャフトのネックを赤と白で塗り分け、その境目をヘッドに引いた白い線と合わせることでボールにスクエアにセットできる。この工夫で、シャフトが体の中心線から目標方向へどの程度傾いているかを表す「シャフト傾斜角」を改善。一般ゴルファー50人の調査では、自分のパターだと平均マイナス2・8度だが、Red9/9ではマイナス1・8度と、1度分、真っすぐ構えられるようになった。
ロフト角は転がりの良い1・5度に設定。素材はヒット時に柔らかさを生むジュラルミンで、軽さを補うためソール両端に各90グラムのタングステンを装着した。フェースは、ボールの接触面積を減らしてソフトなタッチを生む「ダイヤカット加工」を施した。シャフトは安定感のある重さ120グラムで太い外径。グリップには手首の無駄な動きを抑制する「スーパーストロークMIDSLIM2・0」を採用した。
名称には「ハーフ9パット」の意味がある。「購買層は上級者や長くプレーされている方。カップイン率が上がったという声が多く届いています。生産が追いつかず、9月分まで注文が入っています」。5万4000円と高額だが、パターはラウンド中に30回は手にする用具。十数回使うかどうかのドライバーの一般的価格より安いと考えれば、有効的な投資ともいえる。