驚異のエージシューター田中菊雄の世界28 武藤一彦のコラム─小さなショットのアプローチだが、大きなバックスイングが成功の秘訣【技術編】


 転がして良し、上げて良し。田中さんのアプローチショットは絶妙だ。ピッチエンドランの転がし、高く上げるピッチショットと自由自在だ。

 

 まず、転がし。広いフックスタンスは左足体重。落としどころを決め、クラブフェースを目標に向けバックスイング。距離によって大きさをコントロールしながらゆっくり大きく上げ、ストン、とインパクトする。

 

 このショットはグリーン回りのショットだからロングパットの延長と考える。左手甲とクラブフェースを連動して使う左主導。ロングパットのさらに大きなショットとしてフェースをしっかり落としどころヘ向け、インパクト即フィニッシュだ。

 

 次いでバンカー越え、グリーンまで10ヤード以上あるとき、あるいは砲台グリーンへのアップヒルライでの上げるピッチショットは、フェースに球を乗せて運ぶ必要がある。バックスイングを大きくとったら右手首の角度をつけたままダウンスイング、さらにフェースをかぶせず開いたままインパクト。右主導だから左はインパクトでおしまい、即フィニッシュ。だが、右手はしっかり動き続け、しかも左足体重、しっかりフィニッシュに収まる。

 

田中さんのバンカーショット

田中さんのバンカーショット

 このショットはロブショットにつながる。さらにバンカーショットにそのまま対応できる。砂の抵抗があるバンカーでは、バックスイングが大きくなるが打ち方は同じだ。

 

 まずライン決め、次に球の落としどころ。アプローチは転がしと上げるショットの基本2つ。転がしはパットの延長で左手主導、対して球を上げるピッチショットは右手主導。ご自分のスイングの中に取り入れてやってみることをお勧めする。ただし、その際、これまで述べた田中スイングの基本テクニックはお忘れなく。そう、田中さんのスイングの中で注目されることはバックスイング。しっかり上がっている点はお忘れなく。

 

 アプローチというと小さな、力のいらないショットのようだが、バックスイングが生命だ。小さな動きのアプローチだが、ショットである。ここに田中さんの安定したスコアの秘密が隠れている。

 

 「寄せたい、でもミスがいやだ、あれこれ考えるとバックスイングが小さくなります。アプローチ、そしてショートパットのミスはバックスイングが小さいことから起こる。なぜかわかりますか? カップが見えると後ろより前に振りたがるのです、誰でも。トップしたり、ざっくりやるのはバックスイングが上がっていないせいです」エージシューター名人は1打の重みをしっかりと受け止めていい切っている。

 

 「アプローチが寄るか、寄らないかでスコアは変わってくる。わたしなんか最後の土壇場で寄せのチップインバーディーで何回、楽しませてもらったことか。バックスイングをしっかり上げたおかげでいい思いを随分しています」。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。