◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー 今季メジャー最終戦・日本シリーズJTカップ第2日(1日、東京・東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)
3打差8位で出た稲森佑貴(23)=グリーンゴルフ練習場=がこの日最難関の18番パー3で唯一のバーディーを奪うなど4バーディー、2ボギーの68をマーク。首位と2打差の通算3アンダーの2位へ浮上した。今大会名物ホールの18番で、チップインを決めたツアー未勝利選手がツアー初優勝する吉兆を信じ、1981年大会の羽川豊(23歳363日)を更新する大会史上最年少Vを飾る。韓国の金庚泰(31)=新韓銀行=が5アンダーで単独首位。
底冷えの曇天の下、23歳のショットメーカーがすり鉢状の18番の観客席をこの日一番熱くした。ツアー屈指の難度を誇る最終18番パー3。稲森は5ウッドでの第1打をグリーン右手前約20ヤードのラフへ。56度のウェッジでの第2打は手前から転がってピンに当たり、カップへ消えた。「狙ってはいましたけど、決まるとは思っていなかった。大歓声をもらって気持ちいい終わり方ができた」。拾いあげたボールを客席へ投げ入れると、再び喝采を浴びた。
平均スコア3・483とこの日の最難関ホール、18番で唯一のバーディーを奪った。「(第2打はグリーンの)マウンドがきつかったので、ショートしないように、と」と照れ笑い。昨年の朴相賢(韓国)、13年の宮里優作と今大会でツアー初優勝を遂げた4人中2人が、18番でチップインして大会初制覇。それを伝え聞くと「本当にジンクスができあがりそう。神様がくれたチャンスなのかな」とメジャー舞台でのツアー初Vに向けて“吉兆”を感じ取った。
ツアー未勝利も今季24戦で6度のトップ10入り。自身最多4451万円を積み上げ、同じく自己最高の賞金ランク20位へ躍進。今大会3年連続の出場を果たした。過去2年は21位、23位。それでも15年に大会史上初の繰り上がり出場を果たすなど、今大会との縁は深く感じており「優勝しか考えていない」と言い切る。
今年はトレーニングと体重増に励み、平均飛距離は昨季の256・78ヤードから267・76ヤードに伸びた。また、2年間使ってきたドライバーを今大会から契約するダンロップスポーツの「ゼクシオ10」に変更。寒さの中でも「飛ぶし、つかまえやすい」。今大会のフェアウェーキープは71・43%で3位。2日間計4つのパー5で4バーディーと着実にスコアを稼いでいる。「去年よりも第2打で握る(クラブの)番手が場合によっては3番手くらい違っていた」とうなずいた。
フェアウェーキープ率は3年連続でツアートップだ。首位と2打差2位で迎える決勝ラウンド。「気負わずに自分のゴルフを着実にしていきたい」。「着々と」が口癖のプロ7年目が、大会史上最年少V(23歳62日)に向けて“王道”を突き進む。(榎本 友一)
▼稲森佑貴 いなもり・ゆうき ▼生まれとサイズ 1994年10月2日、鹿児島県生まれ。23歳。169センチ、68キロ。独身。血液型A。 ▼ゴルフ歴 実家は練習場。日本シニアオープン出場歴がある父・兼隆さんの影響で6歳から始める。鹿児島城西高2年時の2011年、16歳でプロテストに一発合格。ツアー未勝利。14、15年に一度ずつ2位。今季は賞金ランク20位。 ▼曲げない男 今季フェアウェーキープ率70.44%で15、16年に続き1位。 ▼都会に感激 15年に都内で日本ゴルフツアー機構の年間表彰式に出席。「生で見たかった」と渋谷のスクランブル交差点や東京駅へ。「109」にも入ったが「女物しか売ってなかった」とガックリ。 ▼父と転戦 プロ転向前から父とキャンピングカーで寝泊まりしてツアーを転戦。コースに着くと、近くの「道の駅」を探して駐車場所を確保。車には2段ベッド、テレビ、電子レンジ、冷蔵庫が完備され、風呂はコースで入っていた。今はホテルに泊まるが「狭い空間が好きなんです」。