鈴木愛(24)=セールスフォース=の勢いが止まらない。5月15日現在で日本女子ツアー8戦3勝。2位2回、3位2回と絶好調だ。元々パターは名人だが、今季はドライバーの飛距離も伸びている。愛ちゃんと言えばPING(ピン)。プロに愛用者の多いG400ドライバーを、シニア記者が試してみた。
◆オジサンも愛になれるのか
昨年の賞金女王は、今年も本当に強い。部門別成績には「1」がずらりと並ぶが、今年は「トータルドライビング」も1位。飛ぶし曲がらない。ピンはそんなに良いの? 「試してみますか」。チーピンに悩むこちらの胸の内を見透かしたように、広告・山崎がささやいてきた。よし。どうせならとアイアンやパターまで一式借りて「鈴木愛になってみた」つもりで、よみうりゴルフ倶楽部に乗り込んだ。
G400にはヘッドが4種類ある。標準的なSTD、つかまりのいいSFT、スピン量を抑えたLSTに加えて、今年3月、体積が460cc(他は445cc)で慣性モーメントが最大のMAXが発売された。担当者のお勧めはヘッドのぶれが少ないMAXだったのだが、「愛ちゃんになってみた、なんだから、LSTを打たなくちゃダメでしょう」と生意気を言って、LSTも借りた。MAXは保険のつもりだったが、練習場で後悔した。何しろ、全くつかまらないのだ。芯を食っても、球は右に逃げるし、上がらない。これがロースピンか。担当のお勧めは、オジサン記者への配慮だったのだ。一方、MAXは絶好調。球がめくれて飛んでいく。見ていたレッスンプロが「ドライバー、替えた方が良いんじゃないですか?」と言い出したほど。コースに行くまでもないかなと思ったのだが…。
さて、本番。インから出た。念のため、LSTも打ってみる。軽い打ち下ろしの11番480ヤードパー5。絵に描いたような中弾道が、一直線に伸びる。フォローもあって、セカンドは150ヤードだった。「マジですか」と山崎。そこからは交互に試打。強いフックになりがちなMAXに対して、LSTは本当に真っすぐ。これまで何度もお邪魔しているよみうりGCで「このホールのセカンドをここから打つの?」と驚くホールがいくつもあった。
本番のほうが力が入っていたのかもしれない。本当の理屈は分からないが、コースでのLSTの信頼感は抜群だった。「それに、ずっとフェアウェーから打ってますよね」と山崎。そうなのだ。何より、曲がらないのが大きい。ロースピンでフェアウェーを捉えると、ランが出る。結果、飛距離も出る理屈だ。実はLSTは愛ちゃんだけでなく、昨年の男子賞金王の宮里優作や、今年のマスターズ覇者、パトリック・リードも使っている。勝者のギアには、訳があるのだ。(鈴木憲夫)
◆ピンと言えば「ピンアイ2」
○…ピンのアイアンと言えば、我々の世代には「ピンアイ2」。当時としては珍しい、背面が大きくえぐれたキャビティーバックで、一世を風靡(ふうび)した。何より、前例にとらわれないその発想が革新的だった。愛ちゃん愛用の「i200」は正統派。ロフトも寝ているし、えぐれ方も控えめなアスリートモデルだ。打ってみると、その打感の良さに驚く。しかも、トウ側にスイートスポットが広い。上級者モデルに見えて実は易しい。おいしいアイアンだ。