驚異のエージシューター田中菊雄の世界138 武藤一彦のコラム-番組収録


 「85歳 伝説のエージシューター 田中菊雄の挑戦」―登録者数51万人、国内トップのYouTubeゴルフチャンネルの「UUUMGOLF」の収録は10月末、静岡・御殿場の太平洋クラブ御殿場ウエストコースで行われた。前回、紹介のとおり人気の芹沢信雄プロとラウンド、エージシュートに挑戦しようという本邦初の試み。アシスタントの高橋としみさんを交えスリリングな展開となった。
 太平洋御殿場の練習場で初顔合わせ。そのスイングを見て芹沢プロ。「85歳に見えない若々しさだ。クローズドスタンスで、インサイドからヘッドを走らせすごいパンチ。クローズスタンスだとインパクトで左腰が飛球方向に流れやすいが、左腰をカベにしてずれない、素晴らしい」と一瞬で見抜いた。田中さんは「ゴルフは冒険しないとうまくいきません。極端なフックスタンスからリストターンでフックを打つのも冒険なら、エージシュートをやること自体が冒険。64歳のときたまたまハーフ32が出たのがきっかけ、ワンラウンド64ならエージシュートだ、と以来、冒険し続けております」といって和ませた。

 

 御殿場ウエストに移動していよいよラウンド。だが、田中さん、ボギー、ボギー、トリプルボギー、さらにボギー。5番でパーが出て「やっと片目が開きました」と復調の兆しも、6番でバンカー、林と渡り歩きダブルボギーと、たちまち8オーバー、最悪となった。
 ラウンドのリズムがとれないのだ。ティーショットの前、必ず3人でカメラの前、攻略法、クラブ選択についてはなし、グリーンではホールを振り返って反省会と忙しすぎた。明らかにいつものリズムではないのだ。
 そのあたりを聞かれると「緊張してます。でも大丈夫。85歳になっても色気を出しているからエージシュートができる。後半にかけてみようと色気を出しております」さらりとかわした。直後、7番パー3を5メートルにつけ5メートルのパットを真ん中から入れた。8番はパー。9番でボギーにしたが、アウト44。「インではアンダーを狙います」と元気になった。アンダーどころかインを5オーバーの41ならめでたく85歳の85。エージシュートだ。この世界、田中さんにとってはいつものことだ。

 

 ランチの後の午後、チャージが始まった。10番から2連続パーの好スタートから12番ショートで林へ入れ、さらに14番下りの10メートルを大きくショート、次を打ちすぎて大きくオーバーする4パットのダブルボギーが2つ。続く15番もボギーとした。残り3ホールをすべてパーでなければ、という一歩も引けない状況。
 「ここからが勝負」トーナメント粘った。
 16番パー、17番バーディー逃しのパー、そうして迎えた最終18番、パーで上がれば41でエージシュート達成だ。しかし、パーセーブのパットはカップをかすめボギーとなった。アウト44、イン42の85、エージシュートはならなかった。
 芹沢プロは「前半のつまずきが最後まで尾を引いたが、プロの試合でもよくある悪いパターン。しかし、前半を引きずらず最終ホールまで粘る田中さんに、まさにトッププロの迫力があった。いいものを見せてもらいました。ありがとうございました」深々と頭を下げたのであった。
 YouTubeの人気番組での奮闘だった。直前までのエージシュート回数は669回。番組で670台を見せることはできなかったが、85歳は年内700回到達に向かって順調にエージシュート人生を歩んでいる。その勇姿,雄姿を、ぜひ番組でご覧あれ。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。