GMO代表がゴルフ界に警鐘 ネット有料限定は「歴史的に誤った判断」…女子ツアー主催からやむなく撤退


GMOインターネットグループ熊谷正寿・代表取締役会長兼社長(左)から優勝トロフィーを受け取る若林舞衣子

GMOインターネットグループ熊谷正寿・代表取締役会長兼社長(左)から優勝トロフィーを受け取る若林舞衣子

 IT大手、GMOインターネットグループが来年の女子プロゴルフツアーの大会主催から撤退した問題をめぐり、同社の熊谷正寿会長兼社長・グループ代表(58)が27日、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。同社はネットの有料・無料放送について日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)と対立してきたが、熊谷氏は「協会は歴史的に誤った判断をした」と語るなど、ネットを有料課金のみに限定することで、今後のファン離れにつながることを危惧した。(取材・構成=岩原 正幸)

 ツイッターで自身の考えを発信し続けてきた熊谷会長兼社長は、オンラインで女子ゴルフへの思いを語った。

 「私どもは参入して2年目(昨年は中止)。テレビとインターネットを合わせて視聴率ナンバーワンを獲得し、国内ナンバーワンの大会にしようとやってきた。子どもたちや全てのゴルファーに夢と希望を与え日本中を笑顔にする、と目標を掲げたが、それがJLPGAさんの方針でかなわず、撤退を決定しました」

 7月の大会はテレビ(地上波で視聴者は400万人台)、インターネット(無料で同300万人台)で多くのファンが視聴。来年も継続する予定だったが、協会から「無料放送は認めない」と通達があった。今月24日にJLPGA・小林浩美会長が来季の方針について「有料課金だけというのを全主催者様に説明している」と表明したが、これについて反論した。

 「無料はダメという説明も、有料のみという説明もなかった。僕らが今年、インターネット無料放送をやったことを協会はご存じのはずです。『熊谷さん、来年から無料はできないよ』と(申し込み前に)言ってほしかった」

 GMOグループは陸上、水泳に続き、ゴルフを支援したが、思わぬ形で撤退。視聴数に応じ、今年は約150万円、ジュニア育成基金に寄付するなど競技の普及、育成にも携わった。無料配信というファンの入り口を閉じてしまうことで、女子ゴルフ界の未来を心配し、苦言を呈した。

 「見られてナンボのプロスポーツ。(協会は)歴史的に誤った判断をしている。選手に憧れる子どもが増えると、競技の未来につながる。有料放送に舵(かじ)を切った競技が栄えた話は聞いたことがなく、同じ道を歩んでほしくない」

 さらに、IT界の先駆者らしくネットの活用法にも言及した。

 「スポーツはインターネットを通じて無料で世界に発信すべきです。収益を上げることについても、協会が真剣に考えれば僕らは協力しますと申し上げていた。(今の流れでは)お金を払ってまで見ない、となってしまうと思います」

 ◆熊谷 正寿(くまがい・まさとし、写真)1963年7月17日、長野県生まれ。58歳。91年にボイスメディア(現GMOインターネット)設立。99年、株式上場。2018年7月、ネット銀行事業開始。ヘリコプター、飛行機パイロットの免許を持つ。同グループ社員は8月末時点で約6600人。

 ◆他競技の有料放送 放映権料の高騰やコロナ禍での観客収入減などを理由に、有料放送へと移り変わった競技も多い。自動車レースのF1は、1987年から2011年までフジテレビで放送され、12年からBSフジで放送された。16年からはCS放送「フジテレビNEXT」などで有料放送している。サッカー男子の日本代表のW杯アジア最終予選の放映権料も高騰し、21年カタールW杯最終予選は配信サービスの「DAZN」が権利を獲得。アウェー戦の地上波放送は消滅した。ボクシング世界王者・井上尚弥の今月14日の世界戦は「ひかりTV」と「ABEMA PPV ONLINE LIVE」で課金制のペイ・パー・ビュー方式で、ネット配信された。

 ◆GMOの熊谷氏は「協会は主催者から放映権を取り上げた(形になった)。テレビは視聴率に影響するから無料のネット放送を好まない。だから、小林会長がテレビ側に忖度(そんたく)してネットは有料のみ、という話。割を食ったのはユーザーです」とも述べた。

 協会(JLPGA)は24日に、ネット配信の有料化が「協会の財政基盤の確立につながる点」などを主張した。隆盛を極める今だからこそ、放映権を一括管理し(10月に発表)、23年以降に権利を中継局に売却することで収入源を確保したい狙いがあるようだ。

 大会にとっては開催コストが上がるため、今後無料で見られるテレビ放送がこれまで通り続くかは不透明。その場合、選手のウェアや帽子にロゴを掲出しているスポンサーからも露出面の利点はあるのか、といった話が出る可能性もありそうだ。(ゴルフ担当・岩原 正幸)

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