21年大会王者・松山英樹のマスターズ挑戦史【後編】「勝ったことで日本人でもできるということが分かったと思う」


21年大会最終日に日本人初のメジャー制覇の快挙を成し遂げ、グリーンジャケットに袖を通して笑顔で両手を突き上げた(ロイター)

21年大会最終日に日本人初のメジャー制覇の快挙を成し遂げ、グリーンジャケットに袖を通して笑顔で両手を突き上げた(ロイター)

 男子ゴルフの2024年4大メジャー初戦、第88回マスターズは4月11日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7555ヤード、パー72)で開かれる。米ツアー通算9勝で、2021年大会王者の松山英樹(32)=LEXUS=は、11年連続13度目の出場で3年ぶり2度目の大会制覇を目指す。「ゴルフの祭典」開幕を前に、松山の過去12度の挑戦の歴史を大会ごとのコメントなども交えて振り返る。【後編】では、2018年から23年までの6大会を取り上げる。

 ▼2018年4月 宮里優作、池田勇太、小平智と日本勢4人で出場。前年の結婚後、妻子が初観戦に訪れた第1ラウンド(R)は、73で首位と7打差の29位発進。第2Rは左手痛が再発して71で18位へ浮上。第3Rは計33パットとグリーン上で苦しみ、72と伸ばせず21位に後退。それでも最終Rは、日本人歴代最多に並ぶ4度目の60台となる4バーディー、1ボギーの「69」をマークして、通算3アンダーの19位で終えた。「けがした中でもできることをやった成果。しっかりとしたものを作らないと、やっぱりここでは勝てない」と現実を受け止めた。

 ▼2019年4月 小平智、今平周吾、アマチュアの金谷拓実と日本勢4人で出場した。前週、風邪をひいて寝込んだ影響で第1Rはショットが不調で、75で首位と9打差63位と出遅れ。ショットが上向いた第2Rは、70で46位へ浮上。1983~86年の中嶋常幸の記録を1年更新する、日本人歴代最長となる5年連続の予選突破を果たした。第3Rは8バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの「68」で25位へ浮上。復活優勝を遂げたウッズが会場内に大歓声を沸き起こす中での最終Rは72と伸ばせず、日本勢最高の32位で終えた。大会を通じて生命線のショットが不安定で「残念ですね。1月から感覚的なズレはなかったのに、ここにきてズレてしまったのが一番悔しい」と唇をかんだ。

 ▼2020年11月 新型コロナウイルスの影響で、大会史上初めて秋&無観客での開催となった。日本の賞金王・今平周吾と2人での出場。第1Rは5バーディー、1ボギーの「68」。自身予選R初の60台で、首位と3打差10位と大会自己最高位発進を決めた。第2Rも4バーディー、ボギーなしの「68」をマーク。1991年大会第3R&最終Rの中嶋常幸に続く日本人2人目となる2日連続の60台で、1打差6位で決勝Rへ進出した。第3Rは4バーディー、4ボギーの72で8打差の10位へ後退。最終Rも72と伸ばせず、通算8アンダーの13位で終えた。初めて前週大会に出場して連戦で臨むなど、調整方法を例年と変えて、予選Rでは優勝争いに加わって見せた。「うまくいったところもあり、悪かったところもある。結果としてすごく悔しいですけど、いい一週間だったなと思います」と総括した。

 ▼2021年4月 コロナ禍で例年5万人のパトロン(観客)が数千人程度に制限され、マスクを着用する中、日本人唯一で10度目の出場となった。初日は前週、同じ会場で開かれたオーガスタナショナル女子アマチュア選手権で、日本人初優勝を遂げた梶谷翼に刺激を受けて「僕も続けるように」と1イーグル、2バーディー、1ボギー、の3アンダー69で4打差とメジャー自己最高の2位で滑り出した。第2Rも終始にこやかで落ち着きも見せ1イーグル、2バーディー、3ボギーの71で通算4アンダー。日本人大会最多となる通算6個目のイーグルを13番で奪い、3打差6位で決勝ラウンドへと進んだ。第3Rは、雷雨による1時間17分の中断をはさみ1イーグル、5バーディーで大会日本人歴代最少の「65」をマーク。通算11アンダーで4打差の単独首位に躍り出て、日本男子悲願のメジャー制覇に王手を掛けた。最終Rは4バーディー、5ボギーの73でまとめて通算10アンダー。2位のシャウフェレ(米国)に1打差で逃げ切り、グリーンジャケットにアジア人で初めて袖を通した。高知・明徳義塾高、東北福祉大の後輩・早藤将太キャディーとのコンビでつかんだ初勝利。松山はメジャー通算33度目の挑戦で、1932年から始まった日本男子初の4大メジャー制覇の歴史的快挙を成し遂げた。マスターズの永久シードも獲得。早朝の日本列島を感動で包み込み「緊張しっぱなし。今までは日本人にはできないんじゃないか、というのがあったかもしれないが、覆すことができたと思う。テレビを見ている子供たちが5年後、10年後にこの舞台に立って、争えたらすごく幸せ。勝ったことによって、これから日本人(選手)がすごく変わっていくんじゃないか。日本人でもできるということが分かったと思う」などと満面の笑みで喜びに浸った。

 ▼2022年4月 前年覇者として参戦した。東北福祉大の後輩・金谷拓実、アマチュアで初出場の中島啓太との大会前の練習ラウンドから、ディフェンディングチャンピオンはパトロン(観客)から喝采を浴びる。大会前の公式会見では「(3月に発症した首痛で)心配はあるけど、今年もいいプレーができるように頑張りたい」と大会4人目の連覇への意欲を語った。歴代優勝者が集う「チャンピオンズ・ディナー」にグリーンジャケットに身を包んで初出席。ホスト役として和食中心に刺身と握り寿司や焼き鳥、A5ランクの宮崎和牛のリブアイなどを提供して絶賛された。前週大会を首痛で棄権して状態に不安が残る中、第1Rは3バーディー、3ボギーのイーブンパー、72で回り、5打差19位のスタート。第2Rは4バーディー、1ボギーの69。5打差2位で、尾崎将司と並ぶ日本人歴代最多10度目の予選通過を成し遂げた。第3Rは、強風で気温が真冬並みに下がり2バーディー、5ボギー、1ダブルボギーの77と失速して11打差の14位へと後退。最終Rは5バーディー、5ボギーの72。通算2オーバーの14位で終えて、10アンダーで初優勝したシェフラー(米国)に閉会式でグリーンジャケットを着せた。「(首痛で)1か月くらいまともにゴルフが出来ず、体力的にというより精神的にしんどかった。(今大会は)なかなか思うようなプレーができなかった。もう少し優勝争いに絡みたかった。また外に持ち出しできるように頑張りたい」と再起を誓った。

 ▼2023年4月 前年の日本ツアー賞金王で、東北福祉大の後輩・比嘉一貴と2人での出場となった。首痛と手首痛を抱える中で、第1Rはフェアウェーキープ率100%で2バーディー、1ボギーの1アンダー、71。前週からの雨でグリーンが重くパットで苦戦も6打差26位発進。第2日は強風が吹き荒れ、17番では巨松が3本倒れるなど大荒れとなって8番までのプレーで日没順延に。翌日と合わせて4バーディー、2ボギーの70にまとめて、9差16位で日本人単独最多11度目の予選突破を果たした。第3日は雨で気温が前日から10度も下がり、12番までのプレーで日没順延。2日連続サスペンデッドの厳しい状況下でも、首にもテーピングをしながら我慢し5バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの70で6打差5位へと浮上した。計25ホールを回った最終日。最終Rはグリーン上で苦しみ2バーディー、5ボギーの75と伸ばせず。優勝者のラーム(スペイン)とは10打差、通算2アンダーの16位で終えた。「ティーショットは第3Rの前半以外、だいたい良かった。アイアンショットは総じてずっと悪い。今週は(グリーンの)スピードをつかめなかった。良い状態で4日間プレーできていないのが悔しい。早く練習も制限なくできるようになれば。まず体のメンテナンスを良い形にしたい。勝てるように頑張りたい」と振り返った。

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