驚異のエージシューター田中菊雄の世界197 武藤一彦のコラム


 エージシュートは、ついに1500回の大台に達した。12月17日、よみうりゴルフクラブで月2回、火曜日に開催するので「火曜会」。田中さんは、インからスタートし41、後半を44の85、年齢89歳を4打もしのぐ、4アンダーエージシュートの快挙達成である。

 

 2006年8月、71歳のとき70で始まって以来、19年にわたるエージシュート人生だ。89歳の誕生日を控えた今年は2024年の3月に今季の目標を聞くと「目指すは1500回のエージシュート」迷わず、きっぱりと宣言した。
 “すごい自信ですね”と驚くと「エージシュートを難しいと思うな。田中ができるのだからだれでもできる。うまくいかないと皆さん、すぐ、ゴルフは難しいと泣き言を言って努力しないが、健康で長生きしたいのならのならその先にあるエージシュートを目指すのが何よりいい。エージシュートは健康に良い。健康は目標があってのものだ。ゴルフを飽きさせない、ゴルファーを楽しませます」。

 

 信じられない世界の展開だ。大台が見え田中さんは翌2025年5月26日に「エージシュート1500回記念大会」の開催を決め、その場でよみうりゴルフクラブを予約した。8か月後の120人を超えるコンペ開催をなんの疑いなく準備に入ってエージシュートへの意欲は衰えを知らない。その図太さと、先見、そして、自信。やはりただ者でない。その夢と存在勘にはすごいものがあると思うが、どうだろうか。

 

 さて話は、1500回が出た、その前日の12月16日にさかのぼる。同日、田中さんは1499回目をしっかりとたたき出した。やはりインスタートから41、47の88。ロビーで喜びを分け合っていると「田中さん、おめでとうございます」と、そこへ満面笑顔でやってきたのは、なんと、同日、同コースでラウンドを終えたプロ野球巨人軍の原辰徳・前監督であった。二人は旧知の中、抱き合って喜びあったものだ。原さんは名門、相模原GCのクラブチャンピオンにもなった実力者で報知新聞社主催のクラブチャンピオン日本一決定戦で伝統の全日本クラブチャンピオンズ報知アマゴルフ選手権にも出場したトップアマ。田中さんとは旧知の間柄だ。
 「ハイ、今日で1499回目。エージシュートを1500回したら来年5月26日、ここ(よみうりGC)で、私が会長を務めるエージシュートチャレンジ協会主催の大会を開くことになっています。ここ数年、120から130人がエージシュートにチャレンジします。原さんもぜひ参加してください」と田中さん。と、原さん「そりゃあ、大会には出なくてはいけないなあ」とスーパースターは出場を即決し、なんともめでたいことと相成ったことである。
 原さん、66歳。エージシュート挑戦には微妙な年齢。が、6バーディーなら66でエージシュートだ。
 ちなみに日本プロゴルフ協会(PGA)の公式記録は、中村寅吉プロの1981年、関東プロ・シニア選手権の65歳、65ストロークである。原さんはプロゴルフのキャリアはないが、66歳、原さんのパワーとセンスがあればチャンスはある。2025年5月26日が楽しみである。期待している。

 

 田中さん、1935年(昭和10年)3月3日生まれ。2006年、71歳のとき、静岡・富士国際GC富士コースを70で回る初エージシュート。以来19年。達成コースは、北は北海道から、南は沖縄までの69コースを踏破して、今がある。

 

 1500回の年齢別のエージシュート数をみると、77歳までの7年間で10回だったエージシュートは、78歳を期に年間16回と量産体制に入り、以降、その数は年齢を重ねるごとに増え続け79歳で16回、81歳で81回、83歳では、ついに125回と初めて100回越え、86歳ではなんと246回と年間自己最多を記録している。
 エージシュートはその後、87歳で年間178回、88歳、136回と下降期に入ったが、89歳の今季は、月間エージシュート数は過去2年を上回って元気。そう、2024年12月23日現在201回は来年3月2日まで3か月余を残して90歳の3月3日まで残り丸2か月余、極寒の中のエージシュート環境は厳しいが、あと何回、エージシュートを加算するか、その頑張りに期待がつのる。

 

 ホールアウト後のパーティであいさつした。「皆さん、田中が1500回できるものが(エージシュートを)1回もできないというのはやり方が悪い。健康で長生き。その先にエージシュートはあります。皆さんは、ゴルフは難しい、とすぐあきらめるが、努力せず結果ばかりを追いすぎる。健康で長生きと真摯にゴルフ。エージシュートはその先にある。目標がなかったらできませんよ」と積極的な取り組みを呼びかけて更なる記録達成に意欲をのぞかせている。
 1500回のエージシュート達成。満年齢と同じスコアを争うエージシュート競技である。年齢とともに衰える体力、気力をいかにカバーしてゴルフをたのしむか。エージシュートはゴルファーにとっては怖いような、楽しいような不思議な世界。89歳、田中さんと66歳、原さんが織りなすエージシュートの世界、気をもんで注目したいものだ。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。90歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。