
ツアー初優勝を果たした小西は、ラウンドガールの前でガッツポーズ(カメラ・今西 淳)
◆男子プロゴルフツアー 前沢杯 最終日(27日、千葉・睦沢町・MZ・GC=6652ヤード、パー70)
プロ14年目の小西たかのり(33)=フリー=が悲願の初優勝を飾った。首位タイから出て4バーディー、1ボギーの67で回り、通算17アンダーをマーク。今季から登録名を本名の「貴紀」から改名して2戦目、ツアー第2戦の新規大会で初代王者に輝いた。松山英樹(33)=LEXUS=、石川遼(33)=カシオ=と同じ1991年度生まれの世代では4人目のツアー優勝者となり、賞金4000万円を獲得。賞金ランクでも堂々のトップに立った。
まさかの結末が待っていた。小西は17番で15メートル超のバーディーパットを決め、首位の今平周吾に並んだ。最終18番のパーパットを入れた直後、今平が1メートルを外して優勝が決定。大きな喜びも涙もない。キョトンとした表情を浮かべ「あぁ…勝った~と。17、18番がタナボタ的な感じだった。長かった…。でも、報われたかな」。苦節14年目で初優勝し、新規大会の初代王者になった喜びにひたった。
首位で最終日を迎えたのは自身初。高沖陽介コーチから「とんでもないことが起きるから、いい経験してきな」と背中を押されて臨んだ。13番で1打リードを許した今平を最終盤で逆転。今季から「名前を見つけやすくするため」とひらがなに改名した名前がリーダーボードの一番上で輝いた。
異色の経歴を経て頂点にたどり着いた。幼少期からタイガー・ウッズに憧れ、小学校5~6年時は石川遼と全国大会で争った。だが、家庭の事情で中学時に一度ゴルフをやめた。高校には行かず、引っ越し業などアルバイトに励む中、石川が15歳8か月の世界最年少記録でツアー優勝する姿を見て「もう一度やってみようと思った」。約3年半ぶりに競技を再開し、18歳から千葉・太平洋成田コースの研修生として技術を磨いた。
米ツアー11勝の松山、国内20勝の石川ら同学年が活躍する姿を「うらやましく、ああなりたいと思ってた」と小西。だが、12年にプロ転向した翌年から4年間のうち3年間は獲得賞金は0円。引退もよぎったが「自分のゴルフができてない」と続けた。スター2人に国内3勝の木下稜介を含む同じ年代の“黄金世代”の王者に仲間入りした。
今季2戦目にして、高額賞金4000万円を獲得。昨季の獲得賞金総額の約1372万円をたった1試合で超え、賞金ランク首位に立った。だが「海外に行く資金に」と堅実。「次は2勝目、3勝目を目指したい」。口数の少ない寡黙な男の言葉には力強さがあった。 (星野 浩司)
◆前沢杯アラカルト
▼プロアマ戦 4月14日から10日間行われ、参加権を1組100万円(最大3人+見学者3人)で一般販売。一緒にプレーするプロをオークションで入札できる。
▼賞金 総額2億円、優勝4000万円。当初は最大で総額4億円、優勝8000万円と伝えられたが、賞金に充当するプロアマ戦の売り上げが想定を下回る3・3億円にとどまった。
▼コース 前沢友作氏が22年から所有するプライベートコースで開催。コース名「MZ・GC」は前沢氏と睦沢町に由来する。
▼ラウンドガール プロアマ、本戦ともに全組に帯同。各組でスコアボードを持ちながら回り、大会を盛り上げる。
▼ハイパーカー 前沢氏所有のパガーニ「ゾンダ・ゾゾ」(市場価格約8億円)などをコース内の各所に展示。世界限定130台のパガーニ「ウトピア・ロードスター」が日本初公開されるなど、総額20億円を超えるとされる。
◆小西 たかのり 本名・小西貴紀(こにし・たかのり)。1992年1月16日、東京・葛飾区生まれ。33歳。ゴルフは9歳から。12年に3度目の受験でプロテスト合格。13年日本プロ新人選手権優勝。19年のQTで4位に入り、20年レギュラーツアー出場権を獲得。22年はトップ10入り4回で初シード獲得。175センチ、81キロ。家族は両親。