松山、キョロキョロルーキーから3年目快挙も「執念」は変わらず…番記者が振り返る


 ◆米男子プロゴルフツアー フェニックス・オープン最終日(5日、米アリゾナ州TPCスコッツデール)

 男子ゴルフで世界ランク5位の松山英樹(24)=LEXUS=は昨年10月以降、個人戦9戦5勝と驚異的な強さで世界を驚かせている。米メディアからは「全盛期のウッズ並みの強さ」と評され、今季6戦目で獲得賞金は自身の年間最高額を更新。14、15年大会で現地に訪れた高木恵記者が当時からの成長ぶりを振り返った。

 キョロキョロと、挙動不審な松山の姿が懐かしい。初めて出場した2014年大会を取材した。約2万人を収容する巨大スタンドが取り囲む16番が、この大会の名物ホール。開幕2日前の火曜日だった。15番を終えた松山は「どこから入るの?」と首を左右に振っていた。

 トンネルを抜けて足を踏み入れると、練習日にもかかわらず熱狂するギャラリーの大歓声が待っていた。「すごいですね。野球場みたい」。初めて目にする光景に、少しだけ気持ちが高ぶっていた。「お静かに」とマイクでのアナウンス。ざわつきがやむことはない。ゴルフ場離れした異様な空間に戸惑いつつも、大勢のギャラリーの視線を浴びながらのプレーに幸せを感じているように見えた。

 3打差3位で最終日を迎えることが決まった土曜の夜。松山は「ああ、明日、勝ちたいなあ~」と自ら口にし、周囲を驚かせた。選手は優勝に近い位置にいる時ほど、いつも通りであろうとするし、周りは勝負にまつわる敏感な言葉を避ける。食事中も競技とは関係のない話に終始することが多いのだが、松山は違った。結果2打届かなかったが、勝利への執念を、いつもまとっていた。

 翌年15年にもTPCスコッツデールへ足を運んだ。優勝争いを重ねる度に、1年ごとに「HIDEKI」コールは増えていった。「また勝ちたいから」と、クラブを振り続けてきた。3年前に16番の入り口を探したルーキーは、米ツアーの顔になった。(09~14年、ゴルフ担当)

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