今季の男子プロゴルフツアーは13日、「東建ホームメイトカップ」で国内開幕。昨年初のシード権を獲得した大堀裕次郎(25)=フリー=は、今季ツアー初Vを狙う注目株だ。180センチ超の長身から豪快なドライバーショットを放つ、モデル顔負けのイケメン。松山英樹、石川遼と同世代で、同じ事務所に所属するサッカー日本代表FW本田圭佑(30)=ACミラン=から直接ゲキを受けて成長を続ける大器に迫った。
昨年、賞金ランク41位に入り初のシード権を獲得。同7月のセガサミーカップでは最終日に64を出して9位に入るなど、自信をつかんで迎える今季。初Vに懸ける意気込みは強い。
「昨年はトップ10に5回入ったけど、そのほかで下位に沈むことが多かった。もう少し上位で終われるようにしないと。(シード権を確実に取れるという)安心感はまだない。また今年でリセットして、早くツアーで勝ちたい」
ゴルフを始めたのは10歳のとき。先に始めていた4歳上の兄・耕太郎さんの影響だ。
「最初は嫌々、毎日500球以上打っていた。本当は遊びたかったので、初めの1年半は嫌で。2年くらいして試合に出始めて、同級生と競り合うようになってから楽しくなった。最初は嫌だったけど、ゴルフを通じて友達もできたのでよかった」
ツアー通算7勝の湯原信光(59)に指導を受け、大学4年で関西アマ、日本アマ優勝。翌14年開幕戦の東建ホームメイトカップでは初日、2日目と首位も結果は19位。プロ1年目は8戦して開幕戦が最高位と思うように活躍できず。沖縄で13年末の4日間合宿をともにした所属事務所の先輩・本田圭佑に会うため、思い切ってミラノを訪れた。
「1年目がダメで何かを変えようと思って。トレーニングを始めたきっかけもイタリアに行ってから。しっかり体づくりからしていこうと。精神的にもポジティブになれるよう、2週間叩き込まれ、すごい充実した時間だった。心の持ちよう、準備の大切さを教えてもらった。毎日地道にこつこつ積み上げていくものが、やがて大きくなるということ。自宅にも招いてもらい、ご飯食べながら話した。すごく頼りになる兄貴分。本田君って呼んでます」
本格的にトレーニングを始めたことで、今では体重も10キロの増量に成功。15年に下部のチャレンジツアーで1勝して、16年の活躍につなげた。
「まず体から見直し、栄養士にも指導してもらいながら増量した。ゴルフは(休憩を挟まない)スルーで回ると昼はなかなか食べられない。間でとる食べ物を、どら焼き、ゼリー、プロテインなどいろいろ工夫して。夜は太るために、前はあまり好きではなかった焼き肉を食べるようにした。今ではすごく好き。1年目の東建でさらっと優勝してしまうより1年間苦しんだことで体力づくりもできたので、今思えばあのつまずきはよかった」
182センチの上背で、アマ時代はドライバーの飛距離300ヤード以上の飛ばし屋として有名。世界中のファンを魅了したメジャー14勝のタイガー・ウッズに憧れる。3月には通算19勝の谷口徹と宮崎合宿でアプローチを中心に練習し、小技も磨いている。
「最近は飛距離を抑えて球をコントロールして打っている。飛距離は280~290ヤードくらい。しっかり鍛えて年間通して300ヤード以上飛ばしてもけがをしない体をつくっている。ウッズのようなスケールの大きな選手になりたい」
米ツアーで活躍する松山英樹(25)や石川遼(25)と同学年で、ライバル意識は?
「英樹は昨年もパッと日本に帰ってきて(日本オープンと三井住友VISA太平洋マスターズで)2連勝。その姿を見て悔しい思いはある。遼はジュニア時代から一緒。もちろん一番うまかった。ツアーですぐに優勝して悔しい気持ちもある。でも、オレたちもこうなれるんだと自信を与えてくれた。頑張れば行けると見せてくれた。昨年も一度(練習で)回ったけど、(松山、石川の)2人とはご飯に行くような関係というより、今は早く追いつけるようにと思っている」
日本ツアーを引っ張るんだという覚悟か。
「米ツアーは20歳代で強い選手がどんどん出てきているけど、日本ツアーも世代交代というかベテラン勢を倒せるようにしたい。今年1勝、2勝、3勝と勝って世界ランク(4月9日付で498位)を上げていけば海外の試合に出られたりする。まずはしっかり足元を見つめてやること。早く米ツアーにも挑戦したい。(海外メジャー)マスターズに出たい」
4人きょうだいの末っ子。どんな性格だと自己分析する?
「上に3人いたから、きょうだいが親に怒られているのを見てたりして、これはやったらアカンかなとか“悪知恵”が働く。それはゴルフに役立っている。同組の人が前日『あっちの方向打って失敗したな』とかそういうのをよく覚えてて、じゃあ自分は逆から攻めようってずる賢く考えられる」
子供好きで、育てたい思いはあるという。だが、まずはゴルフ優先?
「子供が好きなので、欲しい。今は自分のことを頑張ってもっと土台づくりして、結婚する相手に認めてもらえるように。大変な職業なので、その辺を理解してもらえる人と結婚したい」
オフの過ごし方は。スポーツにも興じ、アウトドア派だが最近は温泉がお気に入りだ。
「今年は和歌山の白浜温泉に行った。おすすめは城崎(きのさき、兵庫県)で、風呂巡り的な感じでいろいろなお湯に入れるのが楽しい。ただ、湯船の中でもグリップの握りをやってしまったり(笑い)。ゴルフ大好きなので。これからはもっとうまくオンとオフが切り替えられるようになれば。ほかにはテニスやフットサルもする。登山にも興味がある」
ツアー屈指のイケメンは、ゴルフの魅力を多くの人に伝えたいという熱い思いを持つ。
「テレビで見てもらえるのもありがたいけど、300ヤード飛ぶ人もいっぱいいるのでまず現場に見に来てもらいたい。ゴルフをやられる女性や若い男性には、どんどん友達誘ってゴルフしてください、といつも言っている。ゴルフ人口が増えないと僕らも注目してもらえない。始めたらプロのすごさ、迫力も分かってくれる。きっかけを僕らが与えられれば。例えばウェアがかわいいとか格好いいとかファッションからでも興味を持ってもらえたら。まずはプレーで、ツアー初V目指して頑張りますので応援よろしくお願いします」(ペン・岩原 正幸、カメラ・関口 俊明)
◆大堀 裕次郎(おおほり・ゆうじろう)1991年11月20日、兵庫・西宮市生まれ。25歳。10歳でゴルフを始め、大阪学院大高1年の2007年に石川遼らとジュニア日本代表に。大阪学院大4年の13年に関西アマ、日本アマ優勝。14年プロデビュー。15年に下部ツアーで1勝し、16年は約2998万円を稼ぎ、賞金ランク41位。得意クラブはパター。家族は両親、兄、姉2人。182センチ、80キロ。血液型B。