セクシーだけじゃない!記者のハートを射抜いたアン・シネの魅力


ワールドレディスサロンパスカップ3日目、真っ赤なミニスカートで登場したアン・シネ

ワールドレディスサロンパスカップ3日目、真っ赤なミニスカートで登場したアン・シネ

 国内女子ゴルフ界に“セクシーフィーバー”が巻き起こった。「セクシークイーン」の愛称を持つ韓国のアン・シネ(26)=NOW ON=が今月の今季メジャー初戦、ワールドレディスサロンパスカップ(茨城GC西C)で日本ツアーでデビューした。165センチ、53キロのモデル体形。Gカップとも言われる、抜群のプロポーションが際立つタイトなウェアに、ひざ上30センチのミニスカート。長い足と愛らしいスマイルで、多くの日本の観客も魅了した。

 ゴールデンウィークで天候や都心からのアクセスも良く、ギャラリーは大会史上最多を更新。1988年のツアー制施行後でも歴代8番目にあたる計4万1484人が詰めかけた。「多くの声援と愛情、関心を頂けて幸せいっぱいの4日間でした。素晴らしい思い出を作れました。日本でこんなに応援してもらえるとは、夢にも思わなかった。本当に感謝が尽きません。成績を残せず申し訳なく思います」。通算6オーバーの41位という成績以上に、大きな衝撃と足跡を残した。

 報道は過熱し、インターネットやツイッターなどSNSでも大反響を呼んだ。彼女のインスタグラムのフォロワーは急増中で、8万3000人にも上る。大会開幕前から連日追いかけ、取材した私はルックスだけではない、セクシークイーンの魅力に触れた。

 まるで韓流アイドルのようだ。ホールアウト後、テレビの取材前にはその場でしっかりと化粧直し。「オツカレサマデス」。報道陣の前に現れると笑顔を浮かべ、日本語であいさつする。幼少時をニュージーランドで過ごし、語学はたんのう。日本語は「ベンキョウチュー」と言うが「オモシロイ」「ムズカシイ」「オイシイ」など初出場の選手とは思えないボキャブラリーだった。「声も可愛い」と日本の男性報道陣は完全にKOされた。

 当然のように、ラウンド後の質問の大半は外見に集中した。翌日のウェアを毎日、質問される。そんな選手は初めてだ。それでも「私はプロゴルファーである前に女性。注目して頂けることに感謝します」と全く嫌な顔は見せず、楽しそうに答えていた。さらに「セクシークイーン」と呼ばれていることについても「好きですよ。いいと思います」と笑顔で言い切った。

 注目を力に変えて楽しむ。それが彼女なりの流儀のようだ。「いつも肯定的なことを考えて、とにかく笑顔を絶やさないのが私のポリシー」だという。「いつも笑顔を絶やさないように努力しなさい。自分に心を寄せてくれる人には心で返しなさい」という母親の教えこそ、韓国ツアーで屈指の人気を誇ってきた原点だ。

 高いプロ意識はファンサービスにも表れていた。日本初戦では4日間とも、サインを求めて長蛇の列ができた。自らの意思で夏日の日差しの下、40分以上も並んだ数百人全員にペンを走らせた。1人、1人の目を見て日本語で「アリガトウゴザイマス」などと言って、ほほ笑んだ。日本ツアーでは練習などもあり「10分だけ」「子供だけ」という選手がほとんど。もちろん、出場試合数の違いもあるが、この“神対応”ぶりにファンの心が動かされたのは間違いない。

 世界ランクは218位。08年にプロデビューし、09年の韓国ツアー新人賞を獲得。得意のショートゲームを武器に、15年メジャーの韓国女子プロ選手権を制すなど同ツアー3勝。賞金ランクは2勝した10年の3位が最高で、16年は53位だった。10年の韓国ツアー賞金女王だったイ・ボミ(28)=延田グループ=や11、12年の同ツアー賞金女王キム・ハヌル(28)=HITE JINRO=に比べると、韓国での実績では劣る。とはいえ、人気面では才色兼備の2人と伍(ご)してきたという。

 アン・シネは実力以上の魅力を持つプロ。記録よりも記憶に残るタイプなのかもしれない。昨年の日本ツアー最終予選会は45位。今季20試合程度の出場権を持つが、韓国ツアーとの掛け持ちで日本ツアーは残り6試合の予定。次戦は6月のアースモンダミンカップ(22~25日、千葉・カメリアヒルズCC)だ。「来年の日本ツアーの出場権を取ることが目標」。これまでの日本ツアーには希有だった、新たな個性が繰り広げる旋風。実力を疑問視する声や賛否両論も聞かれるが、ゴルフへの興味や関心を引きつけたという意味では、功績は大きい。男として、記者として「セクシークイーン」からしばらく目が離せない。(記者コラム・榎本 友一)

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