田中さんがクラブ対抗の代表に選出された。「2018年度関東倶楽部対抗競技」の代表選手を選出する東京よみうりカントリークラブ(東京都稲城市)の選考会議は、このほど過去1年間の研修会成績をもとに、田中さんはじめ12人の代表選手を選出した。倶楽部対抗競技は関東ゴルフ連盟が主催する、団体戦で競う伝統の対抗戦競技。5月から地区ごとに分け日本全国で開催される。
チームは55歳以上のAクラスとそれ以下のBクラスで構成される。田中さんは、71歳の時、初めて代表となりチーム最高齢選手と話題を集めたが、この3月3日で83歳。その最高年齢記録を大きく塗り替えて話題を集めることとなった。
エージシュートをめざす名物ゴルファー、田中さんだが、そもそもエージシュートをめざしたのは、競技ゴルフに一応のめどをつけたのがきっかけだった。「若い人と競り合い、年齢による心身の衰えに挑戦する。それを励みにやるのもゴルフだが、肩ひじ張って戦うばかりがゴルフではない、とエージシュートが出たのを機会に自分の楽しみ方を変えた。以来、競技からは身を引き、エージシュート一本、スコアにこだわるが、あくまで自分のスコアが相手だ。するといろいろなものがみえてきた」
そうして一歩引いたことでゴルフが変わったのか、エージシュートをめざす中で、飛距離が伸びパットの感覚なども以前とは違う世界が広がっていく。ゴルフの取り組み方を変えたことでゴルフが変り、以前よりスコアがよくなったのだ。例えば、競技ゴルフは距離の長いチャンピオンティーを使うが、エージシュートはスコアと自分の年齢との争い。そこでティーグランドは白ティー、と決めた。そのことで無理をしないゴルフを保て、ショットに磨きがかかった。パワーだけに頼らず、小技を磨き、使用クラブに神経を使う余裕がゴルフに幅を持たせると面白いものでショットがみるみる良くなったという。
さらに、こんなプラス面にも出会えた。とはいえ、「クラブチャンピオンや月例など若い人との競技会はメンバーですから出場します。距離が長いから2オンが無理でも3オンワンパットでもパーはパー、と開き直ってやるとゴルフが面白くなった。若い者に勝つことがしばしばある。そうやって時々、若い者をぎゅー、といわせてそりゃあ気持ちのいいもんです。自信を持ちました。」
距離にこだわっていたが、こだわりを捨て、身を引いたら道が開けた。まさにそんな感じだったのだろう。時折参加するクラブ競技のチャンピオンティーで現役のバリバリをしり目にベストグロスで優勝するなど自分でも驚くようなスコアが出て、成績を積み重ねた。
一回は捨てた競技の世界だったが、クラブ対抗は年齢別のチーム構成が義務付けられているチーム戦。周りからも”ぜひ挑戦を”と誘われた。今回の代表入りの快挙の裏には、そんなこともあった。
エージシュートは3月20日現在、281回に達している。だが、大抵の事で驚かない田中さんも今回の代表入りはさすがに驚きだった。
「研修会は過去1年、毎月行われた。その間、この年で頑張れたのは皆さんの励ましのおかげ。人生に1度のチャンスだ。すべてがうまくいくようこれから頑張れることが私にはうれしい」“私は本当に運のいい男です”の常套句入りで喜んでいる。チームの結団式は4月1日。12人には帽子、シャツ、パンツのユニフォームが手渡される。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。