驚異のエージシューター田中菊雄の世界89 武藤一彦のコラム


 日本エイジシュートチャレンジ協会がいよいよ立ち上がった。
 年齢をハンデキャップとし年齢以下のスコアを目指すゴルフのエージシュートを競技とし定着させ、高齢化社会を元気で長生きしゴルフ界の発展を目指す「日本エイジシュートチャレンジ協会」(一般社団法人・田中菊雄会長)は、6月28日、東京・よみうりゴルフクラブで「日本エイジシュートチャレンジ協会立ち上げコンペ」を開催した。大会にはエージシュート300回越えの協会会長の田中菊雄さん(83歳)をはじめ活動に賛同した38歳から84歳までの20人が参加、発会式のあと、満年齢をハンデとする18ストロークプレーを行い、本欄、おなじみのエージシュート名人、田中菊雄さんがエージシュートに3打及ばなかったものの、ネット3オーバーの86で優勝、初代チャンピオンとなった。

 

 いまエージシュート310回とその記録を更新中の田中さんがその存在感を存分に発揮した。この日、連続ボギーとまずまずのスタートを切った7番パー5で林に打ち込み8をたたき前半43、後半は上がり3ホールをパーで上がればエージシュート達成だったが、いずれもボギーにした。「310回のうち156回のエージシュートをここ、よみうりGCで達成している得意コース。これまでも調子が出ず苦しんでも粘って何とか積み重ねてきたので今日も最後まであきらめず粘ったが、今回はだめでした」といさぎよかった。スタート前はあいさつや始球式などでとても記録を出す雰囲気ではなかった。それでも“見せ場”を作って優勝する。さすがだった。

 

 最高齢は漫画家の安孫子素雄さんの84歳、最年少は38歳の現役ツアー選手、女子プロゴルファーの浪崎由里子さん。プロ野球、前巨人軍の投手コーチ、尾花髙夫さん(60)ら男性17人、女性3人が参加した。主な成績は別表の通り。
 2位は4回のエージシュートを誇る松村善弘さん(76歳)。千葉・木更津GCの所属で田中さんに影響されてエージシュートに取り組んでいる。グロス82と“師匠”を上回っての2位と面目を保った。3位の粟津義弘さんは田中さんと同い年の古い仲間、エージシュートは4,5回やっているが、「仲間内の(グリーン上で)オーケーありの記録。自分としては、数え年のエージシュート記録も含め認めていませんから」と競技志向に徹する。83歳で94ストローク、エージシュートストローク11オーバーに反省しきりだった。
 4位には女性の関口和恵さん(70)が85ストローク、15オーバーで食い込んだ。今回は、特に女性の部は設定されなかったが、“女性の部・初代チャンピオン”の事実は残った。快挙である。
 大会は、男性は白ティーで表示するレギュラーティー(6,161ヤード)。女性は赤ティーのレディースティー(5,788ヤード)のティーを使用した。強風の中、関口さんの85のスコアは、絶賛に値する好スコアだった。後日、競技委員会(設立の折には)初代チャンピオンとして“認定”するべきだとここに提案する。快挙は記録し残されるべきであろう。

 

 84歳、最高齢の漫画家の安孫子素雄さんは、ヒット漫画の“プロゴルファー猿”のようにはいかず、103ストローク、19オーバーで10位だった。
 もう一人、注目の尾花髙夫さん(60)、190センチの巨体から78のベスグロをマークしたもののエージシュートストローク18では17位が精いっぱいだった。この結果のように年齢ハンデは、年齢が低いほど厳しく、70歳以下には上位に入ること自体が難しく厳しい世界だった。
 その好例がこの日の最年少38歳、女子プロの浪崎さんで、ベストグロスの78で回りながら、スコアは40オーバー。年齢、ハンデが低いために最下位だった。浪崎さんは、日本女子プロツアーの現役プレーヤー、田中さんのコーチを務める。高校生活は豪州にゴルフ留学、帰国後,日本のプロテストに合格した。レッスン上手でゴルフ軍団・田中グループのアイドル的存在だ。この日は白ティーから回り、尾花さん、田中耕太郎さん(田中さんの甥、47歳)と3人でベスグロを分けた。だが、38歳はハンデ38のトップハンデでは、たまったものではない。エージシュートストロークは40で、順位は最下位の20位に終わった。ベスグロでもエージシュートの世界では最下位だ!この現実をこの日の参加者は成績表が提示されて初めて知って驚いたことであった。
 概して若者の“被害”が多かった。おかしかったのはもう一人のベスグロ、田中耕太郎さん。18位に終わった成績表をまじまじと眺めながら。20打も悪い父親・勝利さんよりはるかに下位に位置する現実に唖然。「父をはじめ皆さんが元気なのはすばらしい。しかし、僕には、おやじより順位が下に居る事が信じられない。ここ30年では初めてのことです。気持ちの上で納得がいかないのですよねえ」と苦笑い。その反応に表彰パーティーは爆笑に包まれた。
 年齢をハンデにしたエージシュート競技の悲喜が出たのは新しい発見だった。若者たちは各組の中心になって同伴競技者のベテランたちをサポート、準備段階の組織つくり、大会運営を影で支えた。さらなる高齢化社会は目前に迫り日常的に健康で介護を必要とせず自立した生活はこれからのテーマだ。将来を見据え、担い手の若者たちがベテラン勢をアシスト。みんなが自覚して日本の健康を育もう。そんな意欲が感じられ心強かった。

 

 次回は9月21日、同じよみうりGCで田中さんの「300回達成記念を祝う会」が行われるが、それ以前にも活動を幅広く行う声も上がっている。何が飛び出すのだろうか。

 

〇成績(上位と主な成績)
順位 氏名    グロス       ハンデ(年齢) ネットスコア
1. 田中 菊雄 43 43 86  83      3オーバー
2. 松村 善弘 42 40 82  76      6オーバー
3. 粟津 義弘 47 47 94  83      11オーバー
4. 関口 和恵 43 42 85  70      15オーバー
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7. 尾花 髙夫 40 38 78  60      18オーバー
10.安孫子素雄 55 48 103 84      19オーバー
18.田中耕太郎 37 41 78  47      31オーバー
20.浪崎由里子 40 38 78  38      40オーバー
以上

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。