「わたしもエージシュートを目指したいのですが、何歳くらいから始めればいいのでしょうか?」 田中さんのエージシュートが300回を越えた6月ごろからそんな問い合わせのメールや手紙が手元に届くことが多くなった。次のような内容のものもある。「ゴルフは40歳過ぎに始め80台で回れるようになったが、60歳を過ぎパワーの衰えを感じている。いいヒントをいただけないか」「70歳を過ぎ、飛距離が出なくなった。パワーが落ちていることを痛感している。飛距離アップのためのいいトレーニングを知りたい」―
実は田中さんのところにも直談判で教えを乞うゴルファーはもっと多い。というより田中さんの周りはそんな人ばかりだ。田中さんの名声を知らない人はいないからみんな興味津々、クラブのメンバーからは「1度、ぜひ一緒にラウンドを」といわれれば田中さんも「こちらこそよろしく」となるし、顔見知りでなくても、仲間同士の伝手を頼ってすぐ組み合わせができるのもゴルフのいいところだ。コンペがあれば人気者だから次々と新しい仲間が増えていく。かくいう筆者もエージシュート100回のお祝いパーティーにたまたま行き合わせ名刺交換したのが縁。以来、“田中教室の生徒“になった。そして、田中さんに会えば、冒頭の人と同じ悩みを田中さんにぶつけ続けていることを明かさなければならない。勿論、エージシューターには程遠いスコアで低迷しているが、気力は旺盛、入門希望者への回答を田中さんに替わってこう自信をもって言えるくらいの知識はある。
「エージシュート?今からやりなさい。ゴルフはいつ始めても遅いということはないといわれるが、エージシュートはいくら早く目指しても早すぎるということはない」と。
2018年6月、田中さんのエージシュートは300回に達した。達成年齢とエージシュートの回数を比較すると興味深い。
71歳で初めてエージシュートをやった田中さんだが、75歳の時には4回やっている。77歳までは合計10回。年平均で1回強、といったペース。ところが、78歳になると16回と俄然増え79歳では28回、80歳で50回、さらに81歳では81回と驚異的な伸び、そして、82歳の2017年には年間最多の90回。至近の5年間では合計265回。年平均53回になる。
このデータから判断するに、70歳代が達成年齢。しかも、年齢を重ねるにつれ出やすい。冒頭の「何歳からエージシュートを始めたらいいか」という問いには、とりあえず70歳代、それも高齢化するにつれてエージシューターはでやすい。しかも、このペースは加齢1年分につき、スコアは1打多く打てるから体力、技術が維持できれば俄然有利であると答えることができる。
と、ここまでくるとなんと無茶なことを言うのか、とお叱りを受けるのは覚悟ずみだ。無茶を承知で言っているからだ。
そこで田中さんに登場を仰ぐ。
「高齢になればエージシュートができやすいと思いがちだが、元気であればの前提条件が付きます。だから思い立った時がはじめどき。若いうちから準備をしましょう。年は確実に年々1歳ずつ増えるから今の実力とスコアを維持するのは簡単だ、などと考えるのは一番いけません。体力、気力は年とともに確実に衰える。だが、早くからそれを知ってしっかり準備し心構えができたとき、体力も技術も維持される。それがエージシューターを目指すものの年相応の生き方と心得ましょう」
体力維持、年相応のゴルフ?たしかに田中さん、80歳になってエージシュートが急増しているが,エージシュートは60歳代で意識し、準備に入った。そのことは改めて触れるとして飛距離アップにいいヒントはありませんか?と聞くと「飛ばしたければごみ拾いしなさい」といった。あ~またわからなくなった。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。