驚異のエージシューター田中菊雄の世界99 武藤一彦のコラムー仲間たち


 漫画家の安孫子素雄さんは同じ東京よみうりカントリークラブのメンバー同士。歳は安孫子さんが1歳兄貴分。子供向けの週刊少年マガジン誌に連載された「プロゴルファー猿」は、ブルース・リーのヌンチャクショットが登場するなど子供たちに大人気、そんな子たちがジュニア世代になってゴルフの普及に貢献したことで知られる。田中さんとはよく一緒にラウンドする。

 

 二人の交流は田中さんが79歳の2014年にさかのぼる。そのゴルフに初めて触れた安孫子さんは驚きを手紙にしたため、お手のものの漫画を色紙に描くと田中さんへ送った。(写真)

 

安孫子アブさんの手紙

安孫子アブさんの手紙

 「先日はラウンドありがとうございました。その後、50回目のエージシュートは達成されたでしょうか。本当に田中さんのプレーには感服しました。年齢とは全く関係のないあのド迫力のドライバーショットには開いた口がふさがらない驚きを感じました。それにひきかえ小生はスコアが落ちる一方でそろそろ打ち止めか、と考えている始末です。では又。 安孫子素雄」

 

 ド迫力、という表現は言いえて妙。というのも田中スイングを初めて見た人は性別年齢、プロアマかかわりなく、その迫力にまず驚かされる。もう一つ、“ド”をつけるとしたら度肝を抜く、の“ド”だろう。安孫子さんは田中さんを見たとき、わが身のゴルフと比較、自信を無くしそろそろゴルフは打ち止めか、となやんでいるが、筆者も同じだった。元気はもらうが、自信はしぼむのである。

 

 そんないきさつがあったこの年の10月、同カントリーは開場50周年を迎え、開場記念杯には168人が参加、盛大にコースの誕生日を祝った。この記念大会で田中さんは37,41の78、なんと年令を1打下回るエージシュートに1アンダー、という快挙を達成した。それを聞いて安孫子さん、こんなことをつぶやいた。

 

 「今日できることは明日に伸ばすな、といわれるが、私のモットーは今日できないことは明日やればいい。今日できなくても明日、明日だめなら明後日でいいじゃないか。だが、田中さんは、今日やることは今日、今日できなかったら明日できる、の前向きの倍返し、倍々返し。天才は違いますね」

 

 今年2018年9月3日現在、83歳の田中さんは千葉・紫カントリークラブあやめコースで36、37の73ストローク、エージシュートになんと10アンダーで回って見せた。これまでのアンダー記録を2打更新。エージシュートの通算回数は333回に達した。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。