驚異のエージシューター田中菊雄の世界105 武藤一彦のコラム


 ミート率など26項目にわたってデータを解析する超高性能計測マシンは、田中さんのミート率に課題を提起した。ヘッドスピード42は若い30歳代の一般ゴルファーの平均37、38をはるかに超えてびっくり。女子プロの平均値40をも越える高い数値を記録して今後、ミート率をさらに高めることによって飛距離が圧倒的な伸びを期待できるというデータをはじき出した。立ち会った山本幸路プロは「正直、驚いている。ミート率を上げることによって今のヘッドスピードで平均250ヤード、状況がそろえば270ヤードは行きます」と断言するのだった。

 

 田中さんは、「マシンによるスイング計測をしたのは生涯で2回目。つい力まかせに打つだけで、感じが出ませんでした」と前置きしこんな感想。
 「コースではティーの高さを自分で調節し景色に合わせて様々の工夫を凝らして楽しんでいる。球をスタンスの中に入れて低くころがして飛距離を出したり、バックスイングを外に挙げ高い球を打ったり。しかし、ミート率という数値が飛距離や方向性に大きくかかわっていることが改めてわかった。確かに芯に当たった時は球が飛んで気持ちよかった。もっとデータに意識を持ち、しっかり芯を打つ抜き、ミート率が上がると今のヘッドスピードで250ヤード、あるいはそれ以上の飛距離が期待できるといわれ、今後のテーマ、宿題をもらった。次から希望をもって正確なインパクトを目指したい」。

 

 エージシューター田中さんの世界は独自の世界。そこにコンピューターがミート率というミクロの世界を持ち込んで、新たな方向性が示された。今回無理をいってスタジオに来てもらったのは、最近の風潮、ゴルフ技術の流れをしりたい、という好奇心からだった。
 では、今後はどうすればいいのだろう?
 山本プロは言う。「ミート率はボールの位置、ティーの高さなどでショットごとに変わってくる。クラブヘッドはドライバーショットで頭上1メートル20もの高さから降りてきます。プロだって正確にインパクトに合わせられずに苦労しています。しかし、数字は正直。コンピューターがそれを示しているから克服するしかない。それにはクラブ選びが大事。クラブ選びもスコアのうちです」
 年間230ラウンドをこなす強い体をもった田中さんである。「エージシュートは強靭な体力のたまもの」という山本プロは、だからこそ自分に合ったクラブを、というのだった。
 「クラブ選びもうでの内、といわれた。いままでクラブには、自分の腕を合わせないとだめ、と思っていたが、山本プロは、エージシュートに明日がと思うな、といわれた。エージシュートは今しかない。だからクラブを代えることも考えなさい、と」“ウーン!。田中さん考え込んだ。恐れていたことが起こった。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。