タイガー・ウッズ、復活 大会史上最長のブランクで5勝目「これ以上ないドラマだ」


 【オーガスタ14日=榎本友一】2打差の2位から出たタイガー・ウッズ(43)=米国=が6バーディー、4ボギーの70をマーク。通算13アンダーで、メジャーでは自身初の最終日逆転で2005年以来の大会5勝目を挙げた。

 大会史上最長のブランクVで、どん底からの復活を支えた家族と世界中を感動に包む、スポーツ史に残るカムバック劇を演じた。08年6月の全米オープン以来、18勝のジャック・ニクラウス(米国)に次ぐ歴代2位のメジャー通算15勝目。米ツアー通算81勝目で、ツアー歴代最多記録まであと1勝と迫った。

 曇天のオーガスタで、幾多の苦難を味わってきた43歳に晴れ晴れとした笑顔が戻った。最終18番。ウッズは30センチのボギーパットを沈めると、幾重にも取り囲んだ大観衆から喝采を浴びた。忘れかけていたメジャー優勝の喜びに、両手を力強く突き上げて雄たけび。「タイガー!」コールが響く中で「うそみたい。これ以上ないドラマだ」―。かつて無敵を誇ったスーパースターは、スポーツ史に残る復活劇に目を潤ませた。

 81度目のメジャーで、初めて最終日逆転劇を演じた。昨年の全英オープンで敗れた首位モリナリと同じ最終組。5番で3打差まで後退も7番で第2打を50センチにつけて1打差に再接近。勝負のサンデーバックナインで百戦錬磨の経験を生かした。

 12番でモリナリが第1打を小川に入れダボ。今大会初めて首位に並ぶと13番、左に曲げた第1打が木に当たりフェアウェーに出てくる運もありバーディー。15番パー5も伸ばして単独首位に立った。16番では8アイアンでグリーンの傾斜を使い1メートルにつけ勝負を決めた。1986年のニクラウスの46歳に次ぐ2番目の年長V。激烈な優勝争いに「だから髪が薄くなってるんだ」と自虐的に笑った。

 私生活のトラブルで09年以降転落した。不倫スキャンダルで離婚。多くのスポンサーを失った。4度の腰の手術。17年には鎮痛剤などの影響下で運転して拘束され、ふらつく逮捕時の映像が公開された。「一時は歩くこともままならなかった。引退も考えた」。かつて1位だった世界ランクは1199位まで転落し、誰もが過去の選手だと思った。再起不能とも報道される中、毎朝5時起きでトレーニングするなど地道な努力で奇跡の復活。「僕にとって今までで一番大きな勝利」と目頭を押さえた。

 支えてくれた家族に11年ぶりの勇姿を届けた。母・クルチダさん、長女・サムアレクシスさん(11)と長男・チャーリーアクセル君(10)は父と同じ赤黒の服で観戦。「2人とも父親がメジャーで勝つ姿を見たがっていた。諦めずに戦った僕をきっと誇りに思ってくれる」。優勝後、18番グリーン脇で家族と熱い抱擁を交わし、ぬくもりをかみしめた。

 ◆タイガーに聞く

 ―もうメジャーに勝てないと思ったことは。

 「2年前には本気でそう思う時期があった。(マスターズ)初優勝から22年後に、また勝つことができるなんて信じられない」

 ―勝因は。

 「今週一番良かったのはドライバーが安定していたこと。アイアンショットは左右どちらにもうまく曲げられた。誰が勝つか分からない、本当に劇的な戦いだった」

 ―2打リードで18番。

 「まだ終わっていないと自分に言い聞かせた。アーノルド(パーマー)は最後にダブルボギーで負けたこともあるのだから、と」

 ―メジャー18勝のジャック・ニクラウス(米国)は最多記録を抜かれるか心配するべきか。

 「ジャックが心配するべきかは分からないけど、きっと自宅で興奮して見てくれていると思う」

 ◆ウッズのマスターズV

 ▽97年 プロ転向後メジャー初出場。通算18アンダーの大会最少スコアで、2位のトム・カイト(米国)に大会史上最大の12打差をつけ圧勝した。21歳3か月での優勝は最年少。

 ▽01年 2位デービッド・デュバル、3位フィル・ミケルソン(ともに米国)との接戦を制し、前年6月の全米オープンから史上初のメジャー4連勝。グランドスラムをもじって「タイガー・スラム」と呼ばれた。

 ▽02年 史上3人目の大会連覇。当時の大会最多を更新する10ラウンド連続アンダーパーを記録。

 ▽05年 最終日の16番で劇的なチップインバーディーを決め、通算12アンダーで並んだクリス・ディマルコ(米国)をプレーオフで退けた。02年の全米オープン以来11大会ぶりのメジャーV。29歳3か月で最年少4勝。

 ◆タイガー・ウッズ 1975年12月30日、米カリフォルニア州生まれ。43歳。生後9か月でゴルフを始め、全米アマ選手権3連覇。21歳でプロ転向。96年にラスベガス・インターナショナルで初優勝。97年に最年少21歳でマスターズ優勝&最年少賞金王。00年全英オープンで最年少24歳で4大メジャー全制覇。04、05年に日本ツアーのダンロップフェニックス優勝。185センチ、84キロ。前妻との間に1男1女。

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