驚異のエージシューター田中菊雄の世界115 武藤一彦のコラム


 田中さんの20回連続エージシュート記録は失敗に終わった。5月9日、東京よみうりCCのバックティーから果敢に挑んだが、アウトを43とし、イン13番でダブルパーの8をたたいたのが響き48の91。エージシュートに7打も及ばなかった。
 「20回の記念ということで、301回目の時と同じ、田中柳水ドクターらとのラウンド。いい記念になるなら、後ろから行くぞ」とスタート直前に距離の長いバックティーからの挑戦となったが、玉砕した。しかし、それまでの連続記録を大幅に上回る19回というのはすごいことだ。

 

 “記録を狙うのではなかったのか”“それならご自分で決めた白ティーからでしょう”というのは名人には通用しない。記録にはこだわるが、それがすべてではないのだ。これまでも勝負所でさらに自分には厳しく、プレッシャーをかけて取り組んできた。「回数だけにこだわるなら白ティーだが、コースが易しいからスコアが出るのさ、という声も周辺からは聞こえてくる。自分としても現状維持に進歩なし、という気が常にある。タフな状況を作り挑戦することで成長があると思い、バックティーから挑んだ」といつものこだわり。常に前向きなのだ。8をたたいた13番はOBあり、チョロもありと若者のように頭に血が上ったらしい。「風も強かったし仕方ない。次からは気を付けます」わっはっは、と笑い飛ばした。失敗は悔しいが、先を考えれば、それも栄養分、計算ずくの取り組みだったのだ。

 

 名人には次の新たな目標が待っていた。関東ゴルフ連盟主催の公式戦「関東グランドシニア選手権」、伝統の大会を目指しての思惑である。それは見事に花開くのである。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。84歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。