渋野日向子“最強ボディー”のポテンシャル 専属トレーナーが明かす過酷トレーニングと肉体進化


下半身から上半身に力を伝え、体の連動性を取得するためのトレーニングを行う渋野。(左から12月下旬、2月、今月のもの。どんどんスピードが上がり、連動性も高まっている=渋野日向子のインスタグラムから)

下半身から上半身に力を伝え、体の連動性を取得するためのトレーニングを行う渋野。(左から12月下旬、2月、今月のもの。どんどんスピードが上がり、連動性も高まっている=渋野日向子のインスタグラムから)

 女子ゴルフの19年AIG全英女子オープン覇者で、日米5勝の渋野日向子(21)=サントリー=と、昨年11月から専属契約を結ぶ斎藤大介トレーナー(34)が16日、インターネット電話でスポーツ報知の取材に応じた。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、国内ツアーは5月下旬まで12戦連続中止が決定。1年延期された東京五輪、“チームしぶこ”として目指す5大メジャー制覇の目標に向け、現在のトレーニング状況や肉体の進化について語った。(取材・構成 岩原 正幸、宮下 京香)

 新型コロナの影響で先が見えない状況が続く中、渋野は青木翔コーチ(37)の指導の下、ショートゲームに磨きをかけるなど、“技”のレベルアップに励んできた。同時に、昨年終盤に契約した斎藤氏とは、試合のない期間に“体”の調整を続けている。

 「基本的に週2回のペース。まず2月の初戦(タイのホンダLPGA=中止)に合わせてきたが、その後はシーズン中と同じようなレベルを維持してきた。しばらく試合ができない状態になっているので、青木コーチと相談し、先週から(再び長いオフと捉え)体をつくることを始めている。今までで一番激しいトレーニングをしている」

 1回のトレーニングは約90分、重いものは使わず、バランスや瞬発系など。ウォーミングアップだけで約15種類あり、30~40種類のメニューをこなす。渋野が自身のインスタグラムに動画をアップしていた、チューブを引っ張る運動も一例だ。

 「肉体改造のイメージとは少し違う。手でチューブを引っ張っているけれど、実際には腕の力は使わず、右足の粘りで。その結果、スイングの質が安定し、再現性につながる。いかに下(半身)の力を順番に上(半身)につなげるか。連結のトレーニング。単純なパワーだけでなく、使い方で飛ばせるようになる。自分の思い描いたスイングをできるのが最強だと思うので、体のコントロールを覚えることを優先している」

 タッグを組んで半年近く。渋野本人も手応えを感じているという。

 「トレーニング中も笑顔で取り組んでいる。動きのキレを実感している。体の使い方がうまくなり、パワーもついたため、シャフトを以前より硬いものに変えた。飛距離は結果的に伸びたという感じ。コーチはキャリーで10ヤード伸びたと言っている。体重は12月から2~3キロ増えたくらい。シーズンが始まれば歩く量も増えるし、そういう意味では理想的」

 斎藤氏は渋野の潜在能力の高さを絶賛する。以前担当した元世界ランク1位のリディア・コ(ニュージーランド)、全米女子オープン覇者のイ・ジョンウン6(韓国)にも引けを取らない。

 「(最初は)動きの器用さの面で、そこまで良い印象はなかった。体の使い方で少しクセがあり、調子が悪くなった時に崩れてしまうのではという心配もあった。ただ、ソフトボールをやっていたこともあり、元々の身体能力は高い。サッカーみたいに(筋肉が)下半身に偏ることがない。米国でいろいろな選手を担当させてもらったが、ポテンシャルは一番高いのでは。素材、アスリートとして持っているものはダントツ。そこをどう生かすかが大事。(体が大きく)骨格がしっかりしていて、伸びしろがある。握力も50キロ近くと成人男子並みで、手のひら、足のサイズ(26・5センチ)も大きい。あとは吸収が早い。体の使い方とコーチが求めるものがかみ合えば、かなり良くなる」

 東京五輪が1年延期になったが、21年の米ツアー出場権を懸けた12月の予選会挑戦と、将来の海外メジャー全制覇(残りはANAインスピレーション、全米女子オープン、全米女子プロ、エビアン選手権)のチーム目標は変わらない。

 「今できるベストを尽くすだけ。成長を楽しんでいる段階でモチベーションは下がらずにできているのでは。(再開後は)日程がタイトになると思うので、体はしっかりつくっていきます」

 ◆斎藤 大介(さいとう・だいすけ)1985年11月24日、群馬県生まれ。34歳。高校卒業後、専門学校で6年間トレーニング理論を学ぶ。ファイテン社に3年間勤務し、水泳、野球選手、男子ゴルフの片山晋呉らを担当。2014年から豪州に滞在し、16年からは米女子ツアーでリディア・コ(ニュージーランド)、イ・ジョンウン6(韓国)、畑岡奈紗らをみていた。

 ◆取材後記

 昨季、渋野を取材した中で食事に気を使っているという話は聞いたことがなかった。だが、斎藤氏と出会ってからは食事への意識が変わった。コンビニへ立ち寄ると、「何を食べた方がいいか」と質問するようになり、日々栄養に関するアドバイスを受けるなど、体の内側も気にするようになったという。

 渋野がラウンド中に“もぐもぐ”する姿で注目された「タラタラしてんじゃね~よ」などの駄菓子について、斎藤氏は「必要な栄養さえとっていれば、そこまで制限する必要はない。何かをなくすより補う」と、制限しない方針。今季も笑顔で口いっぱいに駄菓子をほおばる渋野の姿が見られそうだ。(宮下 京香)

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