PGA倉本昌弘会長インタビュー 4期目の闘い コロナ禍…怖いのは企業の死「3年くらいのスパンで考えないと」 情報発信の重要性語る


インタビューに答える倉本会長

インタビューに答える倉本会長

 3月30日に4期目(任期2年)の続投が決まった日本プロゴルフ協会(PGA)の倉本昌弘会長(64)=フリー=が、21日までにスポーツ報知のインタビューに応じた。新型コロナウイルス感染拡大でシニアツアーを含めて国内外で大会中止が相次ぐ中、来年以降は大会存続の危機が訪れることについて、国内主要3ツアーのトップとして初めて言及した。今後3年間の影響を危惧しつつ、2014年には会長兼シニア賞金王にも輝いたレジェンドは最大限の対策を練りながら、柔軟な思考と持ち前の決断力で、ツアー開催を目指す覚悟も語った。(取材・構成=榎本 友一、岩原 正幸)

 倉本氏は14年の会長就任当初から「3期6年」を節目と表明してきた。しかし今回、他の理事からの要請を受けて続投。4期目を集大成と位置づける。

 「コンプライアンス、女性ゴルファーや新規ゴルファーの創出といろんなことをやってきましたがまだ道半ば。日本プロの冠スポンサー探しもですが、この2年で次の会長にどうバトンを渡していくかですね」

 新型コロナウイルス感染拡大で、世界的にゴルフツアーは中断を余儀なくされている。PGAが運営するシニアツアーも4月の2戦が延期、5月の2戦が中止となった。国内女子は13戦、男子も5戦が中止。再開のめどは立たない。倉本氏はさまざまな対策を講じて、大会開催の道を探っている。

 「(延期した)4月の沖縄での開幕戦は、我々が強行したいわけではなかった。あくまでも主催者の希望に寄り添ったもの。諦めてしまうのは簡単ですけど、選手にとっては職場。無観客でも試合がないよりはいいと思う。どうすれば試合ができるかを模索しています」

 一方で“二次的脅威”については厳しい見通しだ。

 「一番危惧しているのは、これが長く続くと企業が“死んで”来年以降できない試合がいっぱい出てくるのでは?ということ。シニアだけの問題じゃなく、男女(のツアー)も含めて。例えば大会の冠スポンサー企業が公的資金を調達したら、来年はスポンサーをできるのか。一般的に(企業は)大会開催より雇用継続を優先する。この問題は傷が癒えるまでかなり時間がかかる。『ワクチンができるまで18か月かかる』といわれているし、3年くらいのスパンで考えないといけない」

 シニアツアーは倉本会長の就任後、11試合から今季は18試合まで増えるなど盛況だ。永久シード選手の抜群の知名度と行動力で試合数を増やしてきた。

 「やっぱり地域密着。一つの大きな企業がお金を出すんじゃなくて、小さな地元企業が50社、60社と集まって資金を出していただく。賞金額は少ないかも分からないけど、徐々に大きくしていくこともできる」

 18年のファンケルクラシックで、プロ並みの腕前を持つ原辰徳氏(現巨人監督)がアマチュア枠で出場。3日間計2万5214人でシニアツアー最多記録の観客と話題を集めた。

 「もちろん今後も考えていますよ。アマチュアの有名な方に選手として出ていただこう、と。そうすると宣伝費を出さなくても、シニアツアーを見てくださる」

 約5600人のPGA会員のうち、賞金を稼ぐツアープロは約180人のみ。それ以外の大半はレッスンなどで生計を立てている。練習場は休業要請の対象外だが、新型コロナウイルスの影響で、年会費の免除や一時金支給なども話し合われている。

 「会員がどうコロナと共存できるか。テレワークでレッスンはできないし、動画で有料のレッスンを見る方はほぼいない。練習場はオープンしているけど『3密は避けて』という中でレッスンとなると、やり方を細かく考えないといけない。そこで我々は会員向けのホームページにガイドラインを出した。練習場でのレッスンの仕方、屋外練習場、室内はこうあるべき、と。それを守ってくれれば感染は予防できます」

 昨年7月にPGA主催で鹿児島・指宿市で行われたメジャー、日本プロ(報知新聞社後援)ではリーダーシップで難局を乗り切った。大会直前に鹿児島が豪雨被害に遭う中、緻密(ちみつ)な情報収集と柔軟な決断で最終日36ホール決戦にし、石川遼が劇的な優勝を飾った。

 「あの時は天気の情報などを細かく仕入れて、現地の避難所にも足を運んで被災状況も確認した。選手からは(中止にした)木曜日になんでやらないんだ、とも言われたし、36ホールを日曜日に強行したのもね。どれを引いてもジョーカーの状態(苦笑い)。でも、最後は石川君の優勝で盛り上がるというエースを引けた。状況を正確に判断できたということだと思う」

 PGAの透明性と知名度を上げるため、今後も積極的な情報発信を行う。

 「やっぱり情報を発信することが一番大切。(世論に)たたかれるのは嫌ですよ、僕だって(笑い)。でもね、きちんと知っていただくにはたたかれようが、何しようがしっかりと情報は出していくことが大事。今の時代、たたかれるのを怖がっていたらダメですよ」

 〇…倉本氏は、五輪競技対策本部強化委員長も兼務している。新型コロナウイルスの影響による東京五輪の1年延期について「各選手への影響は分からないですね」と慎重に話す。五輪会場については「霞ケ関CCと大会組織委員会が今、話をしている」と明かした。国際ゴルフ連盟から、延期に伴う五輪代表選手選考方法の正式発表はまだない。「凍結された世界ランクがどうなるのか。何らかの救済措置があるかもしれないし、分からない」と話した。

 ◆倉本 昌弘(くらもと・まさひろ)1955年9月9日、広島市生まれ。64歳。10歳からゴルフを始め、日大では史上唯一の日本学生4連覇。80年にツアーの中四国オープンで初のアマチュア優勝。81年にプロデビュー。82年全英オープンでは日本人歴代最高の4位。92年ブリヂストン・オープンでツアー通算25勝目を挙げ、永久シード獲得。国内シニアツアー8勝。92~99、2012年にJGTO選手会長。愛称「ポパイ」「マッシー」。164センチ、66キロ。

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