驚異のエージシューター田中菊雄の世界142 武藤一彦のコラム-705回の足取り


 年間のラウンド数305ラウンド、うちエージシュート204回を達成した2020(令和2)年は、いろいろなことがあった。中でもラウンド数は、15年のエージシュート人生でも最多ラウンド。驚きの記録である。うるう年の令和2年は例年より1日多い366日で休んだのは61日間だけ。わが驚異のエージシューターは、疲れも見せず年間を通してマラソンランナーと化し駆け抜けたのである。この強さ、スタミナ、したたかさ、何よりも執念は一体どこから生まれたのだろうか。

 

 令和2年の初エージシュートは1月11日、毎年恒例の沖縄・喜瀬CCで生まれた。41,39の80、会心のラウンドだった。だが、この年、新年の初打ちなどホームコースは寒さでなかなか調子が出ず、沖縄も強風が吹き帰京する日、ぎりぎりの3ラウンド目だった。84歳、エージシューターに4アンダー。通算507回目だった。波に乗った。帰京してホームコース中心、かつて知ったコースで1月は6回、さらに2月、10回を上乗せ、通算回数を522回と伸ばした。

 

 2月末、名人に変化が出た。そんな1日あるときこんなことを言った。「これまでエージシュートをやった回数と同じくらい1打足りなかった悔しい思い出があります」目が座っていて“おや?”と感じるほどの、問わず語りの独り言。その時、何を伝えようとしたのかいぶかったことである。が、3月3日、85歳の誕生日を迎え、その意味が分かった。その日、ホームコースのよみうりGCで20年続くコンペ「火曜会」で名人は84、楽々、エージシュートを達成したのである。「1歳トシを重ね85歳になるとエージシュートは間違いなく身近になります。年がハンデのエージシュート。ハンデキャップを一ついただいた。これからエージシュートをごっそりといただきます」とあいさつ、新たなスタートを自ら祝ったのだった。
 エージシュートは4月20回、5月18,6月19,7月15回と増え、8月には25ラウンドすべてでエージシュートをやってのけた。その記録は9月17日まで40ラウンド連続エージシュートという快挙に結びついた。 85歳はいま「私の人生で今が一番若い」と胸を張る。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。