驚異のエージシューター田中菊雄の世界145 武藤一彦のコラム


 年間、驚きの319ラウンドをこなしエージシュート通算740回に到達した田中さん。85歳時の足取りを検証すると興味深い姿が浮かび上がってくる。
 ちょうど1年前の3月3日の誕生日に85歳になった田中さん、3月、4月とエージシュートを連続20回越えの猛ダッシュ、この間のラウンド数は3月が23ラウンド、4月は24ラウンド、エージシュート率は3月が8割6分8厘、4月は8割3分3厘と”高打率“だった。
 さらに、これを上回ったのが夏だった。猛暑の8月は25ラウンド連続して25回のエージシュート、その勢いを9月まで持続40ラウンド連続と伸ばし9月は27ラウンドをこなし、24回の荒稼ぎ。この2ヶ月で計52ラウンドし、49回のエージシュート。実にエージシュート率は8割8分8厘だった。

 

 1年を振り返ったとききっぱりといったものだ。
 「3,4月の成功はトシと共に失敗が減ったという実感の勝利です。エージシュートのだいご味は誕生日にあり。84歳で85だと失敗だが、85歳になったとたんそれがミスでなくなる。この成功がエージシュートにつながります。この素晴らしき世界。ゴルフがうまくなっているという実感がある」と笑顔いっぱいだ。

 

 誕生日前520回だったエージシュートは7月1日、600回の大台、12月19日には700回に達した。その後10月には膝を痛め25ラウンドで11回と落ち込んだが、21年3月2日、めでたく740回である。
 今年1月19日には同伴競技者と2人そろってエージシュートというめでたい快挙もあった。
 よみうりGCで20年続く“老舗コンペ”「火曜会」で90歳の遠藤芳年さんが89、田中さんが84でエージシュートの“そろい踏み”が実現した。会の最年長の遠藤さんは大手米穀商の経営者で名は「ほうねん」。これが200回を越えるというエージシュートだというからすごい。共に1アンダーのエージシュートで互いにスコアカードにアテストのサインを書いたという。田中さんにとっては同会の石川保さんに次いでのダブルエージシュートだったという。会が盛りあがったのは言うまでもない。

 

 精神面と体力の強さに加え、その両方がかみ合ったとき信じられないパワーを次々と繰り出すエージシューターは周辺も驚異の世界に巻きこんで益々存在感を増していくのである。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。86歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。