驚異のエージシューター田中菊雄の世界154 武藤一彦のコラム


 失敗のゲームといわれるゴルフである。ナイスショットが続くのはまれで、ミスは必ず出るから我慢しながらスコアを作っていくしかない、というのがその根拠だ。ティーショットのミスは、セカンドのナイスショットで補い、第2打のミスはアプローチに活路を求める。寄らなくても難しいパットを沈める、その積み重ねこそだいご味という人もいるくらいだ。そのあたりがわかると、ナイスショットばかりを求めミスが出ると俺はだめだとあきらめなくなる。
 田中さんのナイススコアばかりを追い求める、この連載であるが、ミスの歴史を今回取り上げようと思う。
 例えばこの10月だった。田中さんはついにただの1日も休まず31日間コースに出続けた。その結果、20日間でエージシュートを達成、残り11日間は失敗。あえてその11日を取り上げるとー。10月1日のよみうりGC、インスタートの前半41を叩いたところで台風並みの大風が吹きゴールド会という伝統的なコンペは中止。それでリズムが狂ったか、翌2日101を叩き,3日は91で3日連続、収穫なし。しかし、4日から16日まで13日間、調子を戻しエージシュートは14日に900回目の大台、16日には902回に達した。
 しかし、その翌17日、今度は東京読売CC、台風並みの大風が吹きハーフでやめ、翌18日は前半48、さらに19日は44といずれも出遅れ3日連続失敗。悪い流れは続くもので22日からの3日間も木更津CCなどで90,88,89と叩いた。このあたりさらに28日91,31日87と1打足りず、計11日間は記録なし。31日など最終グリーン上で「お先に」のパットを外しトリプルボギーを叩きエージシュートを1打差で逃した。悔しいミスだった。
 「これまで900回余もエージシュートをやっていて、お先に、を何度外したことか。わかっていても同じミスを繰り返す。ほんとにゴルフは怖い。ほんとにわからないゲームです」86歳は、まるでビギナーのように怯(おび)えるのだった。「1打のミスでこれまでに1000回?いや1500回以上失敗していてまだ懲りない、本当のわからないスポーツだ」と反省するのだった。
 エージシュートは10月終了現在909回に達した。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。86歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。