驚異のエージシューター田中菊雄の世界162 武藤一彦のコラム-1000回へ


 エージシュート1000回を当面の目標としてコースに挑む田中さんは、1935(昭和10)年3月3日生まれ、干支でいえば亥年、イノシシである。ゴルフ仲間のおひとりが言ったものである。「どうりで、エージシュートに向かって猪突猛進。まっすぐ突き進むイノシシのひたむきさが快進撃の支えだったか」―。
 そういえば、田中さんはじめ亥年が集まるイノシシ会という月一回のコンペが30有余年続いている。別のお仲間の一人は「ホールインワンは運が良ければだれでもできるが、エージシュートは元気で長生き、その上にシングルを維持する確かな技術とひたむきな前進力が不可欠。といえば心技体がそろった田中さんだからできるのだろうね」といっている。“イノシシの世界”は驚きがいっぱいだ。

 

 明日が誕生日という3月2日のことだった。驚きの好スコアを出した。86歳最後の日、よみうりGCを37,37の74、年齢を下回ること12アンダー、エージシュートを記録した。2年前、84歳と2か月の初夏、新潟・紫雲GCを35,37の72でラウンドし、エージシュートに12アンダーの大記録を出して以来の自己アンダー記録とタイ。86歳最後の日に、自己ベストタイを出すあたり、面目躍如、ホールアウト後、「13アンダーまであと1打。残念」と心底くやしがる姿に驚くしかなかった。
 猪突猛進というと、やみくもに突っ走るがむしゃらさが想起されるが87歳を目前にして見せた旺盛な闘志と実践は、見るものに戦慄を感じさせたことである。 さらにその世界はのぞくに怖い世界を現出してくれるこんなデータも提供している。86歳時の驚きの記録はすごい。
 86歳時、エージシュートは334日、コースに出て246回達成された。驚くなかれ1年365日、休んだのは31日間だけ。心技体の「体」は完全にクリアされてお見事だ。
 この間、連続ラウンド数は116ラウンド、そのうち40ラウンド連続を含む77回のエージシュートに成功した。中でも連続ラウンドは、昨年9月13日から今年の2022年1月6日まで3か月と、24日間連続したところで、1月7日、降雪のためコースがクローズ(閉鎖)され中断をやむなくされた。が、その最後まであきらめない姿に「心」の充実を見た。もう一つの技に関してはいうこともないだろう。心技体がそろい、完成の域に達した87歳。エージシュート1000回まであと数日に迫った。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。87歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。