驚異のエージシューター田中菊雄の世界172 武藤一彦のコラム


 順調だった田中さんのエージシュートは、病気入院などで1か月半の長いブランクを経て再び復活の足音を響かせ始めた。新春の1月2日の初打ちは42,44の86、さらにその3日後の5日も45,41の86。いずれも、自己の年齢87歳を1打クリアする1アンダーラウンド、会心のエージシュートでその通算回数を1158回に伸ばし、昨年末の入院による長いブランクからの復活をアピール、周辺を一気に明るくし始めた。

 

 直近のレポートでも触れたように、エージシュートは昨年11月17日、通算1155回とこれまでにないハイペースで順調に推移していたが、突然、エージシュートはぴたりとその歩みを止めた。11月の中旬のことだ。検査をうけるとあろうことか、軽い脳梗塞が見つかった。23日に検査のため入院。幸い2日間で退院、自宅療養にはいったが「もうラウンドをしたくてうずうずしていた」という。30日には医師に止められていたにも関わらず「我慢できず」“カムバックラウンド”を強行、もう”やんちゃ坊主“というしかなかった。「(病院の)先生に内緒で回りました。ハイ、22日以来、8日ぶりのラウンドをしました。7時36分、インコース、トップスタート、47,45の92。ダブルボギー、トリプルがなければエージシュートだった。」意気軒高の電話での”報告”が頼もしかった。7時36分?トップスタート?”ゴルフをやりたいばかりにコースに無理をいったに違いない、ゴルフコースも、ゴルファーもエージシューターには一目置く。そんな世界が展開して見える。

 

 「ちょっと勘が鈍っているが、ドライバーは飛んでいる」「パットさえ入ればなんとかなる、もう少しの辛抱だ」-その後、エージシューターへの挑戦は前にも増して気合が入っている。
 無茶を言っているようだが、そうではない。日頃「ゴルフは力いっぱい打つのはドライバーショットの14発だけ。あとはコントロールショットとアプローチとパットだけ。病後の体には良くない?何もやらない方がよっぽど体には悪いですよ」誰が何と言おうと、聞かない、いや、70歳のときからエージシュートを競技として取り入れ、年間320から30ラウンドを17年間こなし、1500回を越えるエージシュートの実績をあげる自信がそういわせる。お医者さんも心配性のお仲間も怒る前に“ハハー”とこうべ(頭)をたれるしかない迫力なのでのである。だが、エージシュートは厳しい世界でもあった。それは次回に。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。87歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。