驚異のエージシューター田中菊雄の世界179 武藤一彦のコラム-3回目のホールインワン達成


 田中さんのエージシュートは2023年中に1200回の大台に向かって順調に推移している。1935(昭和10)年3月3日生まれ。この春、88歳の誕生日を迎え、めでたく米寿を迎えた。そのエージシュートにおける話題には事欠かず、次々と思いもしないニュースを提供して驚かせる田中さんだが、4月5日には、ホールインワンをやってのけ、41、42の83、エージシュートに5アンダー、さらにホールインワン入りのエージシュートを達成して見せたのは大快挙だ。自身、ホールインワンはこれで3回目であるが、エージシュートと抱き合わせとなったのは初めて。世界的にもこんな記録は聞いたこともない。ギネスブックものの大快挙といってもいいだろう。

 

 快挙は同倶楽部の最大のコンペ、「芝刈会」で生まれた。舞台はホームコースのよみうりGCの2番、高低差10メートル、眼下にグリーンを見下ろす160ヤードのパー3ホール。手にしたのは9番アイアン、左奥のピンそば4,5メートルに落ちたボールは「ピンに向かい、すっという感じでカップに消えた。グリーンに落ちた瞬間、入ったという予感があった。会心のショット」と田中さん。快挙を同伴競技者たちとハイタッチで祝った、うれしいイーグル。人差し指をピンと立てて見せ、「はい。スコアはイチ。これで、今日はエージシュートがいけると嬉しかった」。田中さんにとって、エージシュートに直接結びつく「1」という数字は、残り16ホールも残っていたが、88以内のスコアで回ればエージシュート。「今日はいける」という自信は確信に変わったのだった。

 

 田中さんはエージシュート年内1200回の達成に向け、大きな一歩を踏み出した。パー3での1というスコアは、そのゴルフライフの充実に向け、貴重この上ない贈りものとなった。ゴルファーならだれでもやりたいホールインワンだが、生涯で3回目のホールインワンという快挙は、いまの田中さんにとっては大きな意味を持つ。この調子だとエージシュートは1300回の回数を狙えるかもしれない。ホールインワンとエージシュートはゴルファーの夢。その2つを一手にして田中さんの夢物語はさらに発展、拡大した。

 

 こんな歴史がある。1990年、同コースの18番ミドルホールは、コース改造のため140ヤードのパー3として10か月ほど使用され、田中さんは同年2月20日、ホールインワンを達成した。急場しのぎながらパー3でのエース達成だが、結局、エース達成は田中さん一人だけ。その歴史は同コースの公式記録として残るが、その田中さんがいま、エージシュートを増産、日本ゴルフ界を驚きに包んでいる。このあたりに田中さんのグッドラック(幸運)を感じるのだが、どうだろう。自身2回目のホールインワンは、2002年の夏、隣接する兄弟コース、日本ツアー恒例の最終戦「ゴルフ日本シリーズ」の開催コース、東京よみうりCCの2番、190ヤードのパー3で2回目のホールインワンを達成している。そして、今回の運命的な3回目のエースは、通算で1177回目のエージシュートを引き寄せた。このあたりにも田中さんのグッドラックを感じる。面白いことになった。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。88歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。