驚異のエージシューター田中菊雄の世界22 武藤一彦のコラム─腕を伸ばしてごらんなさい、大きなバックスイングが生まれ飛距離が出ますよ【技術編】


 81歳で250ヤード。田中ゴルフのパワーは右45度の超フックスタンスから生まれる。今回からはエッセンスをゴルファー個々のスイングの中で体感してもらうことにする。田中スタイルをいきなり、というのは無理なので、ゴルファーは自分のスイングで体感してみよう。

 

 ドライバーショットのアドレス。ボールをいつもより遠くに置き左腕をしっかりと伸ばす。スタンスは右足を引きフックスタンス。いつもよりやや広く、背筋を伸ばし、でっ尻り、顔を起こし、頭を高くする。イメージとしては米男子プロツアーのジェイソン・デーや松山英樹。

 

 しっかり回すバックスイングが狙いだ。ただしその大きさは年齢、性別、体の柔軟性、ゴルフのキャリアによってまちまちだ。だが、テーマはほとんどのゴルファーに共通する欠点、小さなバックスイングをなくすことにある。これまでのゴルフライフでやってきたゴルフが、いまエージシューターの田中さんによって変えられようとしているのだから少し冒険。とにかくバックスイングを大きく、しっかり上げることを肝に銘じてやってほしい。

 

 構えたら左腕を伸ばしトップからインパクト、体中を使い大きなシャドースイングをする。テークバック、右ひじを折りトップへは手首を使いあげる。ワッグルを入れながら繰り返す。背筋が悲鳴を上げるかもしれないが理想はトップでシャフトが地面と平行になるくらい。でも体の堅さもあるからできるだけ大きく、でよい。

 

 そして球を打つ。左手を伸ばしバックスイング、切り返したら左腕は伸ばし、インパクトに向け右腕を伸ばす。このとき右を伸ばして左が縮むのは一番いけない、左が引けるとすべて壊れる。右も伸ばすが、左腕もさらに負けずに伸ばすことだ。

 

 その意識と実践がインパクトを作る勝負所だ。インパクトとは球にクラブヘッドが当たった瞬間、伸びた左手と右手が入れ替わることで生まれる。左手の伸びきった先のヘッドは右手のパワーと球を打った瞬間に入れ替わる。それがインパクト。遠くにボールを置くのは、これまでうまくいかなかった近くの球を、手を縮めて打ってミスしてきた過去に別れを告げるためだ。勇気がいるが効果は? 田中さんを見ろ、だ。

 

 「バックスイングをしっかり上げろ」と田中さんがいうのはここのところだ。上げて下ろすのがスイングだが、全身のパワーをクラブに乗せてはじくには“上げ下ろし”といった生ぬるい動作ではない。両腕をしっかり伸ばす。背筋を張り、足,腰のパワーを全身でインパクト に込める動きなのだ。

 

 腕を伸ばす。田中ゴルフの真髄だ、命(いのち)である。

 

 田中ゴルフはそのためにボールを極限まで遠くに置きたたく。田中さんは手が縮んだり球に小手先で合わせたりする動きを極力排除する。

 

 「ゴルフで一番いけないミスはダフリ。ボールから遠くに立って手を伸ばし振るからヘッドが走る。パワーが伝わる。インパクトで手が伸びるからスイング軌道が安定する。腕が縮むことがいかにスイングに良くないか。これではっきりしますよね」“こんな簡単なことどうして皆さんはやらないのでしょう”といつも問いかけてくる。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。