「アイアンのインパクトでは芝の根っこを切る。球を上げようと思うなら芝の根っこをたたき切る。そのくらいのしっかりインパクトしたい」。
フェアウエーからのアイアンショットがうまく打てないと嘆くゴルファーに田中さんが叫んでいる。自分もうまくなりたいが、うまくなりたいと意欲のある同伴競技者にもその願いを強く抱く田中さんだ。その口調は熱い。
「芝を切れ!それじゃ足りない。根っこを切れ!そのくらいしないとアイアンは上がってくれませんよ」―
芝の根っこを切れ!歯を食いしばって地面に突き刺せと気持ちの問題のようだが、やはり技術、インパクト の問題だ。
バックスイングを大きく上げたいがためにスタンスの向きはついに右45度を向いた田中さん。アイアンでも同じだ。バックスイングはオーバースイングオーケー。上げれば上げるほど力が溜まる。飛ばない、球がつかまらないと嘆く大方のゴルファーのスイングは後ろが小さすぎるという。
「小さなバックスイング、上がり切らないバックスイングは諸悪の根源、ろくなことがありません。前が怖いので後ろが小さくなるのです。前とはインパクト、後ろはバックスイング。目前のボールに当てよう、合わせようとすると後ろが小さくなるのはゴルファーの心理でしょうね。でもそれを克服しないといつまでたっても下手のままだ。しっかり上げ手を伸ばす 、芝の根っこをたたき切るのはやはり技術です」。
バックスイングはシャフトがトップで地面と水平が理想。だが年齢や体の柔軟性で個人差がある。要は、良く伸びた左手がインパクトまで軌道を作りダウンスイング以降は右手が伸びインパクトで左手を右手が追い越す。この右と左の入れ替わりが大事だ。
田中さんの感覚では左手はインパクトまで左手が命、球とフェースがしっかりインパクトしたら左手はそこまで。あとは右手が伸びればアドレスの位置でヘッドが左手を追い越すのを待てばいいという。「多くのゴルファーは球に近すぎる。この現象も怖がることが原因。しっかり打とうと思ったら球は遠くに置く。球はこんなに遠いのか、と思うくらい遠くに立って手を伸ばす。かかと体重よりつま先ウエートも悪くない」。
前回、パット、アプローチで体感した飛球ラインにクラブフェースをかぶせてたたく。しっかり上がれば左の頬に壁が生まれてくるのだという。
「フェアウエーのアイアンショット。芝を切る。芝の上の球を打つには芝の根っこを切るくらいしっかりと打ち込めということだ。球にヘッドをぶつけるスイング。フェアウエーへヘッドを落とす。球ではなくヘッドを落とすとその結果、球にヘッドがぶつかり、ぶつけるから球が上がるという認識だ」。
エージシュート名人、田中さんの口から飛び出す言葉は奥が深い。「この年になると何もしないで1日が経ったらもったいないと思います。何もしないで猛スピードで死に向かって走っていくより1日を有意義に生きる。それが81歳の日々を好きなゴルフに駆り立てている」という。2017年シーズンは2月9日現在、エージシュートは5回。通算で185回を数えた。超フックの広い超ワイドスタンスはバックスイングを大きくするための田中流。身をもって結果をここに示す田中さん、いまから挑戦すればあなたもエージシューター? 夢はおおきく。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。