エージシュートは年齢からコースのパーを引いた数字がハンデキャップ。パー72のコースなら田中さんのハンデは10,パー71なら11。この”ハンデ“との闘いだから、年を取ればハンデが増えるからエージシュートのチャンスは増える。最近の 田中さんの足取りを見ると有利な条件がそろって先行きは明るい。
81歳時よりゴルフのレベルが上がっているように見えるのは、年齢が加わりハンデキャップが一つ”有利”に働いているせいもある。普通に考えても同じレベルのゴルフを維持できれば、エージシュートの可能性は高くなってくる。
しかし、これには条件がある。現在のレベルを保ち維持できれば、という前提である。加齢は体力の衰えを伴う。田中さんだって元気と言いながら70歳の体力は当然のことだが、82歳の今はない。気力も落ちているだろう。
高齢化社会を元気で過ごす、というが、そう簡単でないことはシニアに差し掛かった人なら理解できるはず。今のゴルフを維持することが、いかに大変か、この最大の課題、テーマは年齢による衰えとの勝負なのである。そう、考えると、田中さんの見方、見え方も違ってくる。
田中さんのゴルフライフは様々なことを教えてくれる。
ラウンド中、こんなことがあった。「ちょっと立ち止まって、靴を見せてごらんなさい」と言われた。立っていると足元に座り込んでショーズの後ろ、かかと側に指を入れ、「こんなゆるい締め方じゃダメです、靴ひもをしっかり締めましょう」という。いったい何が起こったんだ、といぶかっていると「靴ひもはしっかり締めるのです。靴の中で足が躍るようなゆるさじゃ土台が動く。地面をしっかりつかみ、踏みしめて足を使うのです。どうもスイングに力強さが見えない、締まりが見えないとみていたが、足元がゆるい。ゆるんだスイングからいいショットなんて絶対生まれませんよ」という“お小言”を食らった。
名人のゴルフは球を打つだけがゴルフではないことを教えてくれる。靴の履き方、紐の締め方にもスイングと同じくらいの配慮がいる。
靴のはき方にもスイングのエッセンス、田中ゴルフのきも(胆)がある。次回、そんな隠し味をひろい集める。ゴルフが別のものにみえてくる。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。