20歳・永井花奈「車庫」での練習実った初V…史上初2週連続男女最終日中止


父・利明さん(右)、母・裕子さん(左)と優勝杯を手にする永井花奈(カメラ・頓所 美代子)

 ◆女子プロゴルフツアー 樋口久子・三菱電機レディス最終日(29日、埼玉・武蔵丘GC=6580ヤード、パー72)

 ツアー史上初の珍事が、男女ともうれしい初優勝をもたらした。台風による悪天候で、2週連続で男女とも最終日の競技が中止。女子は2日目終了時点で通算7アンダーで首位だった永井花奈(20)=デンソー=が、男子は3日目を終え通算13アンダーで首位だった小鯛竜也(27)=フリー=がともに初Vを飾った。男子は詳細なデータの残る1978年以降、女子は88年のツアー制度施行後初の2週連続最終日中止で、賞金ランクへの加算額は75%。

 大雨による競技中止。スタート前、クラブハウス内で待機していた永井に、朗報が舞い込んだ。プロ2年目で手にした初優勝に「支えてくれた両親に感謝したい」と涙があふれた。

 6歳でゴルフを始めた頃からプロを志した。当時、両親は都内でラーメン店を経営。中学に進学する直前、母・裕子さん(51)から「プロになるまで1億円はかかるといわれている。やるなら本気でやりなさい」と諭され、練習の虫になった。

 汗を流したのは約6畳の自宅の車庫だった。「都内の練習場はボール代も高いので」(母)10歳の頃、コーチで父の利明さん(50)が改造して練習場に。「基本はウェッジで、腰の高さから腰までクラブを振る練習しかできない」(父)なかで、いわゆるハーフショットの練習を、時には1日に10時間以上も行った。

 昨年のプロ転向後も「車を入れないでね」と懇願。前々週、前週と2週連続で予選落ちした際には、父に「練習しに行くか」と聞かれると「車庫がいい」。台風21号の影響で大雨だった22日も数時間、無心で打った。父は「おかげで今週はウェッジの距離感が良くなった」とたたえた。

 日出高2年だった14年の日本女子オープンで3位。アマ時代から注目されてきた逸材。すでにツアー3勝の畑岡奈紗らに続き、また女子ゴルフ界にヒロイン候補が誕生した。「今まで両親に苦労をかけている。もっともっと恩を返していきたい」。孝行娘は車庫から、ひのき舞台へ大きく羽ばたく。(高橋 宏磁)

 ◆永井 花奈(ながい・かな)1997年6月16日、東京・品川区生まれ。20歳。6歳からゴルフを始め、東京・日出高1、2年時の2013、14年に関東女子選手権を連覇。14年からナショナルチーム入り。16年7月のプロテストでトップ合格。昨秋の最終予選会で14位に入り、今季のほぼ全試合の出場権を獲得した。家族は両親。155センチ、55キロ。

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