【武藤一彦 王者の系譜】片山ワールド全開…サム・スニード流“正対パッティング”


天才ゴルファーと呼ばれたサム・スニード

天才ゴルファーと呼ばれたサム・スニード

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー 今季メジャー最終戦・日本シリーズJTカップ第2日(1日、東京・東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 片山ワールドが全開だ。6番パー5、第1打を295ヤード飛ばして2オン。上りスライスラインを入れるイーグルを決めた。快調にスコアを伸ばしていた同組の今平は、右土手に落としダブルボギーをたたいた。一気に追いつき「アンダーパーになるし、順位は上がるし流れが良くなった」。首位と2打差2位へ上昇するキーホールとなった。

 ショット抜群、パットよし。イーグルパットが入った時だ。歓喜の渦のロープサイドで片山のクラブを担当するオノフのクラフトマン、木下孝昭さんと目が合った。私が「サム・スニードだ。サイドサドルパット。右手の押しで打つパットだ」と話しかけると、木下さんも「はい。普段プロはそういう感覚だ、そういうふうにやりたいのだと言っています」と返した。

 サム・スニードは20世紀最高のスインガー。米ツアー最多の通算82勝を誇り、タイガー・ウッズを3勝も上回る。しかし全米オープンだけは勝てず、悲劇の主人公でもある。52歳で最年長優勝、67歳で「66」とツアー初のエージシュートをやってのけたことでも知られるが、晩年はパットが入らなくなった。そこで編み出したのがサイドサドルスタイルだ。

 婦人が乗馬の際に横座りで乗るところから呼ばれるが、スニードはカップに正対し、右足の横に球を置くと右手のひらをカップ方向に押し出して打つのだ。最初はパットラインをまたいで押し出すように打ったが、押したりかき寄せるのはルール違反と言われ、体をラインと並行させればいいだろうと考案した。

 片山のパッティングスタイルは、まさにスニードに接近していた。オープンスタンスは限りなくカップに正対し、右胸を支点にした長尺の右手はボウリングのスローイングのように使う。ホールアウト後に「晋呉君は打つ前にショットもパットもまず正対するルーチンから入るが、大事なことなんだね」と聞くと「その通りです。常に正対して球を処理したいのです」と答えた。片山こだわりの技をあと2日間、ぜひ生で見てほしい。(ゴルフジャーナリスト)

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