「テーラーメイドとキャロウェイの新ドライバーがゴルファーの注目を集めている。M1&2の後継モデルとなる「M3&4」(テーラーメイド)と、EPICの進化形「ROGUE(ローグ)」(キャロウェイ)だ。どっちが飛ぶのか。人気を二分する最新ドライバーを、シニア記者が打ち比べしてみた。
◆全米OPで注目
久しぶりの試打企画である。立場が変わってから、「下手な原稿を書くと、部下に示しがつかないんじゃないの?」という周囲のプレッシャーと、正味の忙しさからご無沙汰していたが、そんなことを言っていられないクラブが出たのである。
M1&2の次世代モデルとなるM3&4は、2016年全米オープン優勝のダスティン・ジョンソンが、1月の米ツアーで433ヤードをホールインワンしかけたことで俄然(がぜん)、注目を集めた。バカ売れしたEPICの後継のROGUEは、ビックリするぐらい簡単になったと、こちらも評判は上々だ。これはじっとしていられない。借りたのはM4と、ROGUE STAR。舞台は東京・稲城のよみうりゴルフ倶楽部。こういうことだけは耳の早い広告の山崎が抜け目なくついてきた。
10番314ヤードパー4。距離はないが、急な上りで油断のならないインのスタートホールだ。いつもはスプーンだが、この日はもちろんドライバー。M4から試してみる。いきなり当たった感触があった。真っすぐなボールがグリーンへ向かっていく。「えっ、バンカー?」と、ヨイショのうまいキャディーさんが驚いてくれる。もちろん、ガードバンカーまで届くわけはないのだが、2打目は60ヤードを切っていた。
後ろの組がまだ来ないのを確認して、ROGUE STARも打たせてもらう。こちらは少し、ヒール寄りだったが、ボールが目で追えないぐらい、初速は速い。「どこ行った?」と思わず聞いてしまった。飛んだ感触はなかったのに、2打地点に行ってみると、M4よりも2ヤードほど距離は出ていた。
◆アベレージ向け
毎度のことながら、この2社の技術革新力には感心させられる。EPICでは、カーボン製のクラウンとソールを、ヘッド内部の柱(ジェイルブレイク)でつないで、パワーが逃げないようにした新構造に驚かされた。フェースに集中したパワーが驚異的な初速を生んだが、ROGUEではさらに進化している。テーラーのツイストフェースもすごい。フックやスライスが出る時のフェースの当たり所を分析。フックではトウがかぶって当たり、スライスでは開いてヒール部に当たることを突き止めた。で、その部分の角度を変えておこうという、まさにコロンブスの卵の発想だ。
いつもチーピンでボロボロになる記者にとって、トウが微妙に逃げているM4の顔はなんとも言えない安心感がある。捕まり過ぎる怖さがないのだ。実際に、曲がり幅も小さい。気持ちよく振れるだけに、距離も出る。一方、ROGUE STARの据わりの良さも特筆もの。横長に見えるヘッドで、慣性モーメントはいかにも大きそう。重心距離が短く、捕まりもいい。
両方とも面白いことに、フブキと組んで純正シャフトを作っているが、M4は50グラム台で、ROGUE STARは40グラム台。総重量もROGUEの方が軽く、「やさしさ」を追求したことが分かる。明らかに「アベレージ、または高齢者向け」の作り。しかし、ヘッドスピードが記者より速く45メートル毎秒もある山崎が、途中からROGUEを離さなくなった。「スライス、しないですねえ」と、このまま持って帰りたいような顔をして握りしめている。バカだね。
◆設計哲学の違い
両者の違いは、設計の哲学だろうか。打つ人の力を出し切って飛ばそうとするM4と、オートマチックに、自分の力以上に飛ばすROGUE STAR。こう書くと後者のほうが良さそうだが、構えた時の前者の安心感はなんとも言えない。独断で言えば、フッカーにはM4、スライサーにはROGUEだろう。○○とクラブは、新品に限るのである。(鈴木憲夫)
◇ROGUE STAR 大人気だったEPICを、「やさしく飛ばす」をキーワードに改良。自慢の「ジェイルブレイク」=写真=テクノロジーをさらに進化させて、初速がさらにアップした。易しいほうから順に「ローグ・スター」「ローグ」「ローグ・サブゼロ」の3種類のヘッドがあり、スターの純正シャフトは「フブキ CW40」や「エボCW50」など。重量はフブキのSで289グラム。
◇M4 M2の後継モデルで、M1後継のM3より易しいとされる。トウ側上部をオープンに、ヒール側下部をシャットに捻った「ツイストフェース」で曲がり幅を狭め、スピードポケットが進化した「ハンマーヘッド」で飛ばす。純正シャフトは「フブキ TM5」で、カスタムは「ツアーAD IZ6」と「スピーダー・エボ4 661」。総重量は純正のSで299グラム。