日本人に愛される女性ゴルファー、イ・ボミが「愛される力」に込めた行動哲学と素顔


本を手に、持ち前のスマイルを見せるイ・ボミ

本を手に、持ち前のスマイルを見せるイ・ボミ

 韓国の人気女子プロゴルファー、イ・ボミ(29)の魅力に迫る「イ・ボミ『愛される力』日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学」(キム・ミョンウ著、光文社、1296円)が好評発売中だ。日本ゴルフ界で男女問わず人気NO1といわれる元賞金女王。本人へのインタビューを通じ、日本への思いを聞いた。(樋口 智城)

 愛らしいルックス、気さくな人柄、確かな実力で、日本のゴルフ界で断トツ人気を誇るイ・ボミ。本書では、日本に参戦した当初から密着取材を続ける在日韓国人3世のジャーナリスト、キム・ミョンウさんが、その魅力に迫っている。

 「海外選手にとっては、日本でこうした本を出してもらえるのは光栄なこと。信頼する人から提案があったので引き受けました」

 韓国人スポーツ選手が、ここまで日本人に親しまれる例はない。著書の題名「愛される力」について聞くと、フフフと照れくさそうな笑顔を見せた。

 「韓国で『人気あるんですか』と聞かれますが、正直自分では分からない。ファンが多くなったと感じたのも、賞金女王の後なのか初優勝の後なのか…。気づけば、なんですよね」

 流ちょうな日本語を話すイ・ボミ。著者のキム・ミョンウさんによると、来日直後からファンとの交流を重視。毎年末に日本と韓国で開催されるファンとの忘年会は、今でも欠かさず初めから終わりまで出席しているという。

 「一番うれしいのは、だんだん子どもたちのファンが増えていったこと。ボミちゃんボミちゃんって声かけられて。今でも原動力になってますね」

 来日以来、一番悲しいことは、との質問には「今」と即答した。15、16年と2年連続賞金女王に輝いたが、17年は賞金ランク23位と不振。18年も9戦中4度予選落ちするなどスランプが続いている。

 「一生懸命頑張っても、結果が出ない。来日以来、一番悩んでます。ちょっと時間かかりそう」

 愛称はスマイルキャンディー。ファンは常に笑顔を求める。

 「調子良くないとやっぱり(笑顔は)減りますよね…ハァ~。笑いたいけど笑える状況ではないのは、ファンに申し訳なく思っています。考えすぎてしんどいなという時もあったが、どの選手もこんな時期があるんだと言い聞かせてます」

 不振の中、支えとなっているのは家族。母、姉、2人の妹の存在は大きい。幼少のころからサポートを惜しまなかった父・ソクジュさんを14年にがんで亡くして以来、その気持ちは年々強くなった。

 「そうそう、今は姉の子どもから毎日電話がくるんです。『ミスは人間だからあるよ、前向きに考えて~』って。まだ小学校3年生なのに!」

 小さな励ましが大きな力になる。

 「あの子が姉のおなかにいたのは、つい最近だった気がするんですけど…。今は成長して、こんなに元気をくれるのが信じられない。子ども欲しいなあって考えちゃいます」

 そろそろ結婚も考える時期にも来ている。

 「願望、ありますよ。結婚したい。ゴルフのスイッチを恋愛に変えれば、難しくはないはず!」

 いたずらっぽく笑うが、「すぐ」ではない。

 「順番としては、後悔しないくらい全力でプレーしたあとに結婚…ですかね。まぁ基本的に結婚しようって言ってくれる人もいないですけど…」

 本を読むファンに向けてのメッセージも送ってくれた。

 「正直『愛される力』という題と内容は恥ずかしいんですが…。私のゴルフ人生、どんな考えを持ってプレーしているのか全部入っているので読んで楽しんでもらえばうれしいです。あと、日本の女子プロがどう頑張ってツアーを盛り上げているのかも、読者に分かってもらいたいですね」

 最後に飛び出したのは、日本のゴルフ界を思う言葉。周囲への気遣いこそが、イ・ボミ人気の秘密なのかもしれない。

 ◆イ・ボミ 1988年8月21日、韓国水原市生まれ。29歳。12歳からゴルフを始め、07年プロ転向。10年に韓国ツアーで賞金女王を獲得。日本ツアーには11年から参戦。12年に初優勝を果たす。14年に報知プロスポーツ大賞(女子ゴルフ部門)受賞。15年に国内男女両ツアー史上最高賞金額で賞金女王、16年にも2年連続女王に輝いた。158センチ、56キロ。血液型A。

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