驚異のエージシューター田中菊雄の世界85 武藤一彦のコラム


田中さん(左)と吉田幹夫さん(桜ケ丘CCで)

田中さん(左)と吉田幹夫さん(桜ケ丘CCで)

 2人合わせてエージシュート393回の名人がばったりと初顔合わせ。83歳の田中さんと80歳の吉田幹夫さん。田中さんはエージシュート295回、吉田さんは98回。ともにエージシュート歴は10年を越える、今が盛りの2人が会ったのは、年恒例のクラブ対抗選手権の東京予選の会場だった。
 大会は5月21日、東京・桜ケ丘カントリークラブで行われ、八王子CCと東京国際GCが晴れて1、2位を占め、6月18日の決勝大会(埼玉・霞ヶ関CC)の出場権を獲得した。予選には東京地区14チームが出場、わが田中名人は東京よみうりCCの正選手の座を逃し、この日は応援にまわったが、その会場で偶然、出会ったのが、東京五日市CCの代表取締役で理事長の吉田幹夫さん(写真、左から田中さんと吉田さん)、この日は総勢12人を引き連れてやってきていたのだった。

 

 次々と上がってくる選手の成績が書き込まれる速報ボードのごった返す前で吉田さんを紹介されたのは同クラブの飯田支配人からだ。飯田さんとは筆者が記者時代、トーナメントで毎週のように顔を合わせた、トーナメント運営会社・ダンロップポーツの元ディレクター。近況を話すうち、田中さんのエージシュートの話題がでると「それならうちの社長も、、」ということで話は早かった。

 

 がっしりとした体躯の吉田さんは「初エージシュートは70歳。うちのコースを32,35の67で回った」と競技ゴルフを経ての強者とお見受けした。ほかにホールインワン5回、クラブチャンピオン3回、理事長杯1回、最近ではグランドシニア杯(のカップ)もとった」と球歴は華々しい。社長兼理事長が先頭立ってクラブ競技に出て優勝して表彰式はどうなるのだろう、などいらぬ心配が頭をよぎったが、すばらしいことだ。同コースの小さいことにこだわらない雰囲気が想像され、思わず笑いが込み上げた。

 

 吉田さんと田中さんは名刺交換する間もなく話が弾んだ。ご縁がいっぱいあった。田中さんは2016年、81歳の時、東京五日市CCで行われた「関東グランドシニア選手権予選」で81のエージシュート、しかも予選を突破するという快挙を達成した。これは主催の関東ゴルフ連盟の最年長決勝進出の記録で表彰も受けた。思い出のコースなのだ。おかしなことに吉田さん、そのことはご存じないようだったのが不思議だった。

 

 吉田さんは、田中さんが白ティーから完全ホールアウト、どんな悪コンデションでもノータッチ、プレースなし、でやっていると明かすと「わたしも完全ホールアウト。ただし、ティーはバックから赤ティーまで、こだわらずに、その時の同伴者と合わせて楽しくやっています」とおおらかさをみせた。
 だが、共通しているのは自分の出したエージシュートはすべて記録、データにはこだわっていたこと。スコアにはこだわるが誰とでもいっしょに回り、楽しくプレーするという点では一致を見たものだ。「下手と回ったために俺のスコアが悪かったという人がいるが、ゴルフは全部自分の責任、わたしは誰とでも楽しくやるのがゴルフときめてます」という吉田さんに田中さんも大きく笑顔でうなずいた。

 

 実は田中さん、このほど一般社団法人「日本エージシュート・チャレンジ協会」を立ち上げた。6月下旬にはその立ち上げの第1回競技も開催される。そんな話に及ぶと吉田さん「では私も田中さんのように本腰を入れてやらにゃいけませんな」-ツーといえばカー。協力を惜しまぬ姿勢が頼もしかった。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。