◆女子プロゴルフツアー CATレディース最終日(19日、神奈川・大箱根CC)
7月末のプロテストに合格したばかりの大里桃子(20)=フリー=が、3バーディー、3ボギーの73、通算10アンダーで逃げ切った。日本女子プロゴルフ協会によると、プロテスト合格と同一年のツアーで初優勝を飾ったのは史上初(1988年のツアー制施行後)。同じ98年生まれで、アマ時代1勝の勝みなみ(20)を目標にしてきた黄金世代の一員は、2年前の地震で被災した地元・熊本への思いを口にした。
一度は諦めかけた優勝を、大里が自らの力でたぐり寄せた。スタート時の3打リードが1打になり迎えた18番パー5、フェアウェーから残り105ヤード、ピッチングウェッジの第3打はピン20センチにピタリ。大拍手を受け、グリーンに近づき、ようやく確信した。「実感がない。最後の方は、1年目だし負けても悔いはない、と吹っ切れた」と、涙はなかった。
一緒に最終日最終組を回るはずだった、同学年で親友の新垣比菜(19)が過少申告によりまさかの失格。この日スタート前、新垣の母・純子さんから「応援してるから頑張ってね」と激励され、気持ちが奮い立った。同じ黄金世代の思いを背負う大里は、ライバル心が原動力になった。
2014年4月、地元・熊本のバンテリンレディスでボランティアをしていると、勝の15歳293日での史上最年少優勝を目の当たりにした。「すごいなと思ったけど、だんだん悔しさがこみ上げた」。負けず嫌いに火がついた。本格参戦1年目の今季序盤、6戦連続で予選落ちしたが、勝、新垣、小祝さくら(20)に1年遅れて7月末のプロテストに2度目の挑戦で合格。合格と同一年の初優勝は史上初。合格翌日の7月28日のプロ入会から23日目での初Vは史上最短記録となった。
優勝スピーチでは「熊本地震で被災した方に少しでも元気になってもらいたい」と感慨に浸った。自身も熊本市内で母、兄と被災し、車で一晩過ごした後、故郷の玉名郡南関町に1か月避難した。3日間のフェアウェーキープ率は約43%と低い数字ながら、持ち前の「粘り」を発揮した。19年末までの出場権を得たシンデレラガールは、「まだまだ下手くそ。2勝目を狙うゴルフができるように練習したい」と、貪欲に語った。(岩原 正幸)
◆大里 桃子(おおさと・ももこ)1998年8月10日、熊本・玉名郡生まれ。8歳からゴルフを始める。熊本国府高3年時の2016年、九州ジュニア優勝。昨年のプロテストは1打足りずに不合格となったが、今年7月に2度目の挑戦で合格。家族は両親と兄。ドライバーの平均飛距離は250ヤード。170センチ、60キロ。