◆女子プロゴルフツアー 北海道meijiカップ第1日(9日、北海道・札幌国際CC島松C)
前週のAIG全英女子オープンで日本女子2人目のメジャー制覇を達成した渋野日向子(20)=RSK山陽放送=は、凱旋試合で4バーディー、2ボギーの70。“シブコフィーバー”の中、2アンダーで首位と3打差の11位と好発進した。極度の疲労で体調不良に悩まされたが、笑顔は忘れず、12番ではカップ破壊からのバーディーなど見せ場たっぷり。この日も全英で得意とした後半にスコアを3つ伸ばした。67で回った申ジエ(韓国)が単独首位。
渋野の組が動くと、常時300人以上、多い時で600人近くの観客が移動した。グリーンではテレビカメラ7台が撮影。係員は通常の2倍となる10人近くが配置された。警戒ムードの中、“スマイルシンデレラ”は、危険性を考え自粛を検討していたハイタッチを子供限定で行い、トレードマークの笑顔を絶やさず回った。メジャー制覇後の初ラウンド。明るさの裏には体調不良との闘いがあった。
「本当に良くない。今朝から頭と喉が痛くて、しんどい…。すみません」。6日に帰国後、都内で記者会見を2つこなし、7日に北海道入りし前夜祭に出席、8日にプロアマ戦出場と実質“ぶっつけ本番”で臨んだ。疲労に追い打ちをかけるように強い雨が降った前半は、アイアンショットの精度を欠き1オーバー。ハーフターン時に約30分間、クラブハウスで寝落ちするほど疲れはピークだった。
その中で、全英の通算18アンダー全てを稼ぎ出した後半、天候の回復もあって立て直す強さを発揮した。12番パー5は高く上げた50ヤードからの第3打がカップ左縁を破壊。「カップが崩れていた」。勢いよくピン根元に当たり6メートル跳ね返った。競技委員に修復してもらった直後、全英時をほうふつとさせる強気の“壁ドン”パットでバーディーを奪った。16、18番も伸ばし、70の11位発進。6月のニチレイレディス1ラウンド(R)から国内19R連続イーブンパー以上で歴代11位に並んだ。全英の4R分を合わせると実に23R連続だ。
渋野は「この体調の中、アンダーで回れて良かった。アプローチでカバーできて後半はノーボギーで何とかなった」と胸をなで下ろした。13番途中には両膝に手をつく場面もあった。試合後は初めて一切練習をしなかった。2日目に向け「初日と同じように欲張らず、その中でもアンダーを出したい。体調も悪いけど、しっかりゴルフをしたい」と、フィーバーの渦中にも冷静に言った。史上初の米日ツアー2週連続優勝(日米の順は1987年岡本綾子の1例)の偉業へ、持てる力を振り絞る。(岩原 正幸)
◆シブコに聞く
―バーディーを取ると大歓声が上がった。
「今までとは違う人数なので、たくさんの人に『ナイスバーディー』と言っていただいてうれしかった」
―子供からハイタッチを求められた。
「小さい子供もたくさんいて『頑張って』『好きです』とか言ってくれてかわいかった」
―スタート前の目標は。
「回り切れたらいいと思っていた。イーブンでは回りたいと思っていたので、それ以上で良かった」
―連日騒がれて重圧は?
「今日のスコアを見る限り、プレッシャーにはなっていない。試練とかはない」
―珍しく練習をしないで帰る。
「この試合も大事だけど、体調を悪化させないように。いつものパット練習(距離を変えて9球中7球入れたら終了)はやりたかったけど」