◆女子プロゴルフツアー LPGAツアー選手権リコー杯第3日(30日、宮崎・宮崎CC=6535ヤード、パー72)
3差3位で出た、賞金ランク3位の渋野日向子(21)=RSK山陽放送=が5バーディー、4ボギーの71で回り、通算5アンダーの3位をキープした。一時は単独首位に立つも終盤2ホールを連続ボギーとし、代名詞の笑顔は消えて怒り心頭。首位と2差の逆転V圏内で「(可能性は)60%。まだチャンスはある」と逆転での1988年のツアー制施行後、最年少賞金女王に挑む。賞金ランク1位の鈴木愛(25)=セールスフォース=は70で回り、1アンダーの12位へと浮上した。通算21勝のイ・ボミ(31)=延田グループ=が7アンダーの単独首位。
“しぶこスマイル”が終盤になって渋い顔になった。渋野は、単独首位の自力賞金女王圏内で迎えた17番第1打を左に曲げると、4メートルを左に外しボギー。「あれだけ左に行って、もうブチ切れました」。18番は左ラフから2打目をミスショット。クラブを振り回し、珍しく怒りがあらわに。4メートルを外してボギーとし、さらに表情は曇った。6月ヨネックスレディス最終R以来、今季3度目の最終2ホールで順位を落とし、「上がり2つがダメ。もう台無し。自分でも抑えきれないイライラだった」とほえた。
第2R後は不安だったショットを調整した。青木翔コーチから「おなかも動かして振ってみな」と助言され、スイング時の体の動きを見直した。前半は5番ボギー後、6番で4メートル、7番で3メートルに寄せて連続バーディー。9番で今大会初めて首位に並ぶと、12番のバーディーで単独。その後はテレサ・ルー(台湾)、イ・ボミ、ペ・ソンウ(ともに韓国)と争いながらも16番で首位に立った。同組のボミとラウンド中は「結婚話」で盛り上がり、スマイルが光った。
宮崎CC開催の03年大会以降では第3R最多の8664人が来場。逆転Vへ2打差に詰めたものの、「多くの人が見てくれたのに情けないゴルフをした」と不出来を悔やんだ。ただ、攻めの姿勢を忘れたわけではない。5月のワールドレディスサロンパスカップとのツアー初のメジャー2冠も視界に入れ、逆転優勝の可能性を「60%。まだチャンスはある」と言い切った。
優勝すれば、賞金女王を争うランク1位の鈴木が2位タイ以下の場合、逆転で最年少21歳16日での女王に輝くが「(思いは)0に近い」と無欲。「練習して、寝たら切り替えはできる」と言って約2時間、猛練習した。青木コーチは「自分のプレーをすれば、(優勝&女王は)おのずとついてくる」と背中を押した。
飛ぶ鳥を落とす勢いの今季を支えたルーチンがある。毎週試合を終えると、必ず岡山の実家に帰る。父・悟さんとたわいもない話をし、母・伸子さんの手料理でパワーをもらい次戦に行く。最終Rは一番そばで支えてきた両親も駆けつける。「優勝することが一番の恩返し。そこは意識したい」と真剣なまなざしで語った。
19年有終の美 練習を終えた渋野は帰り際、報道陣に「おっつかれした~」としぶこ節で言った。シンデレラのごとく駆け上がった一年。2019年の集大成で有終の美を飾る。(宮下 京香)
◆渋野の逆転 日米5勝中、最終日の逆転は3勝。ワールドレディスサロンパスカップは首位タイから出て、71で回り初優勝。資生堂アネッサレディスは2打差2位から追いつきプレーオフを制した。全英女子オープンは2打差首位から、68で逃げ切り。9月のデサント東海クラシックは8打差20位から、64で大逆転した。前週のエリエール大王製紙レディスでは2打差7位から66で回り逆転優勝。