渋野日向子の師匠が全英へ決意「スタイル変えない」


昨年の日本女子プロ選手権で、青木コーチ(奥)と練習ラウンドをする渋野日向子

昨年の日本女子プロ選手権で、青木コーチ(奥)と練習ラウンドをする渋野日向子

 20日開幕の女子ゴルフメジャー、AIG全英女子オープンで日本人初の連覇を狙う渋野日向子(21)=サントリー=は、13日からのスコットランド女子オープンで6月の国内ツアー以来の今年2戦目を迎える。7日に渋野と2人で渡英し、英2連戦でキャディーを務める青木翔コーチ(37)が今月上旬、スポーツ報知の電話取材に応じ「スタイルを崩さずぶつかるだけ」とメジャーへの決意を語った。

(取材・構成=岩原 正幸)

 強風に目まぐるしく変わる天気。渋野にとって、自身初の海沿いのリンクスコース攻略へ、青木コーチのサポートが欠かせない2連戦となる。

 「去年(ウォバーンGC)は林間コースで、僕もリンクスは初めて。英国のコースの下の硬さは分かりますが、あまり先入観を持って入りたくない。それは渋野がプロテストを受けている時からです。転がしのアプローチが必要とか、最低限のことは言います。コースの感じ方は人によって違うので、彼女がどう感じ、どういうことを求めるのか、横で感じて、必要なことを伝えたい」

 リンクスに合わせた攻め方をする選手もいる中、渋野の練習ラウンドのスタイルは日本でも海外でも変わらないという。ピン位置を想定してセカンドを打ち、攻めた時のミスを想定してグリーン周りを練習する。

 「ティーショットは(深い)ポットバンカーに気をつけて打つ、というくらい。あとはポットバンカーで遊ぶんだろうって(笑い)。風、雨がどうなるかは行ってみないと。たまにエディンバラ(スコットランド)の天気予報を見ますが、風速11メートルとか。(ボールが動くから)グリーンはそんなに速くできないのではと思ったりします」

 現在は推薦出場する今週のスコットランド女子オープンに向けて現地で調整中。次週は渋野が「連覇できるのは私だけ」と意気込む全英が待つ。

 「(全英の)前の週に出させていただけるのはすごくありがたい。ただ、2試合でダブルボギーを何個打つのかな、と2人とも覚悟はしています。ありのままでぶつかってみてどうなるか、(コースの雰囲気など)感じてみないと。スイングの状態は僕がいることで、大丈夫だと思う。実際ゴルフの内容は誰も予想がつかない。去年だって、優勝するなんて僕も含めて誰も思っていなかった。だから、自然体で行こうという意識が強い。(その上で)まず、いい位置で予選を通ること。予選の通り方も重要視している。(攻撃的)スタイルを崩してでも、通らなきゃいけないかというと、そうではない。スタイルを生かした上で予選を通ることで成長し、自信が深まる。そこは崩さずにぶつかりたい」

 6月のアース・モンダミンカップでは予選落ちを経験。米ツアーを見据えた肉体、スイングの変化をどう見ている?

 「渋野はレギュラーツアー2年目の若手で、まだまだ発展途上です。トライ&エラーを常に繰り返して、成長していくものだと捉えています。去年良かったものを変えるのは結構、勇気がいることです。でも進化というか『変えるもの』と『変えないもの』を分けて進んでいかないと。彼女自身のゴルフに対する取り組み方は変えなくていいもの。ただ、トレーニングして体が変われば、スイングや(クラブの)シャフトも全て変わるというのは起きるべき変化だと思います。その中でフィーリングのズレが出てきて、アースの時は解消しきれていなかった」

 渋野は6日のリモート会見で9、10月の米メジャー出場を表明した。コーチは英国から一時帰国するが、渋野は長期の海外転戦となる。

 「米国の試合で自分らしさ全開で戦ってほしい。型にとらわれず、球筋、スイングもそう。コースマネジメントに関しても、『自分』をしっかり持ってやっていくことがすごく大切です。その上で(もう一つ)メジャーを取ることがゴルフ人生にとって、その先の人生においても最大のプラスになると思います」

 ◆青木 翔(あおき・しょう)1983年3月28日、福岡県生まれ。37歳。2011年にジュニア、プロゴルファーの育成開始。12年、自身のゴルフアカデミーを兵庫に設立。17年秋から渋野日向子のコーチとなる。昨年のAIG全英女子オープンでは渋野のキャディーを務める。

 ◆リンクスコース 海沿いに位置し、自然の地形を生かしたフラットなコース。英国のコースは、寒暖差も含め「一日の中に四季がある」と言われるほど、目まぐるしく天候が変わり、湿った海風と強い雨に耐えなければならない。ラフには芝以外の自然植物が生い茂り、ほとんどのバンカーが深い。

 ◆ロイヤルトルーンGC グラスゴーから南西へ約50キロにあり、ビッグトーナメントの開催コースでは最も海に近いとされる。隣接するクライド湾から吹く、海風の攻略がポイントになる。名物ホールは「ポステージ・スタンプ(郵便切手)」と呼ばれる8番パー3。打ち下ろしでティーグラウンドからグリーンは起伏などで「切手」のように小さく見える。風の影響を受けやすく、グリーン周りには5つの底の深いポットバンカーがある。これまでに男子の全英オープンが9回開催された。

 〇…今回の2連戦はコロナ禍での人数制限により“師弟”2人で挑む。渋野は「スーツケース1個に、お菓子や駄菓子を持っていきます」と語っているが、青木コーチは食事の準備に余念がない。「日本からアルファ米を持って行きます」。水やお湯で作る非常食の米で、昨年は帯同した父・悟さんが渋野のためにおにぎりを作ってサポートした。青木コーチは「牛丼、親子丼にするタイプもあるので、(食事で)なるべく飽きないように」と話している。

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