昨年のAIG全英女子オープンで日本人42年ぶり2人目のメジャー制覇を成し遂げた渋野日向子は、今季から“世界進出”を意識したクラブセッティングに変更した。初のリンクスコースに向けたクラブ選びを含め、用具契約するピンゴルフジャパン社の担当・浦山康雄ツアーディビジョンマネジャー(42)に聞いた。
渋野の今季使用ギアは基本的に昨季から大きな変化はない。ただ「昨季終了後、ロフト角56度のウェッジから同じモデルの58度に変更しました」。このオフは一日500球など、58度でアプローチの猛練習を続け、既に5本のウェッジの溝がなくなったという。わずか2度の差だが、今後の海外での戦いを見据えると違いは大きい。浦山氏は「56度の方が易しいですが、ロブショットやグリーン周りのアプローチの種類を増やすには58度じゃないと難しい」と話す。芝質が異なり、グリーンの硬い海外を想定。球を上げやすくフェースの開閉がしやすい58度で、高弾道のロブやスピンを効かせて転がすなど、寄せの幅を増やす狙いがあった。
さらに、トレーニングで力強さを増した肉体の変化とともに、ドライバーは手元が動くタイプのシャフトに変えた。渋野は「高くて強い球を打ちたい」と、しなりを少なくするためにSRからSに1段階硬くした。本人も「ウッド系の飛距離は10ヤードは伸びた」と実感する。
今回の英国2連戦で初めて挑むリンクスコース。硬いライに対応するため、ウェッジの底のふくらみを削るなど、従来の日本人選手はリンクス対策を練ってきた。当然、浦山氏も渋野や青木翔コーチ(37)と相談。チーム渋野は「全英だけ違う物を使うよりは、ポットバンカーやグリーン周りも普段のウェッジでどれだけ対応できるかが大事」との結論に至ったという。感覚と将来を重視し、あえて普段通りでリンクスに真っ向勝負を挑む。今大会は58度ウェッジでの多彩な寄せに注目だ。(榎本 友一)
◆渋野の20年用具 ▽1W=G410+(ロフト角10・5度、44・75インチ、シャフトはフジクラVENTUSの硬さS)=想定飛距離250ヤード▽3W=G410LST=225ヤード、5W=G410=210ヤード▽4、6UT(22度、26度)=G410=190ヤード、180ヤード▽5~9I、PW=i210=170ヤード~115ヤード▽ウェッジ(52度、58度)=グライドフォージド=100ヤード~80ヤード▽パター=シグマ2アンサー▽ボール=タイトリスト・プロV1(ボール以外はPINGゴルフ社製)