首位からスタートした小祝さくら(22)=ニトリ=が6バーディー、ボギーなしの66で回り、大会新記録の通算17アンダーで2位に6打差をつけて圧勝した。昨年7月のサマンサタバサレディース以来のツアー通算2勝目。地元の北海道で行われた先週のニトリレディスで笹生優花(19)=ICTSI=に惜敗した道産子美人プロは1週間後に雪辱し、1998年度生まれの「黄金世代」では4人目の複数回優勝を果たした。8月のNEC軽井沢72、ニトリレディスで優勝した笹生は29位だった。
おっとりとした道産子美人プロがあっさり勝った。1メートルのウィニングパットを沈めた小祝はガッツポーズをすることなく、右手で帽子のつばを軽く触っただけ。2位に6打差の圧勝にも「ギャラリーがいないので」。新型コロナウイルスの影響で無観客開催の中、手にした2勝目を静かに振り返った。
1年2か月前のサマンサタバサレディースで初優勝した際に「人生で一番の喜び?」と問われ、「BTS(韓国の男性ヒップホップグループ)のライブで前から2列目の席が当たった時の方がうれしかったので2番目」と大マジメに答えた。この日の大会新記録での優勝も「3番目かな」と、さらりと言った。
いつも、ほんわかした雰囲気を漂わせているが、先週は珍しく感情を表した。地元・北海道の小樽CCで争われたニトリレディス。笹生とマッチレースを展開したが、2打差で惜敗。ニトリ所属の22歳は「先週は悔しかった。リベンジができてうれしい。今週は頑張りたいと思っていた」と心の内を明かした。
実は苦労人でもある。中学卒業後、女手ひとつで育ててくれた母・ひとみさん(40)を助けるため、通信制の飛鳥未来高に進学し、ゴルフ場でアルバイトをしながら腕を磨いた。母に毎月3万円を渡し、残りはすべて貯金した。「お金がないから一発でプロテストに受かってほしい」という母の願い通りに17年の初挑戦で一発合格した。
ツアーに初めて本格参戦した18年、2年目の19年と、いずれも13回もトップ10入り。良く言えば「抜群の安定感」だが、悪く言えば「勝ちきれない」だった。
1998年度生まれ「黄金世代」の一員。同学年のライバルたちは9人が優勝しているが、これまで複数回優勝は3人だけ。1年2か月ぶりにツアーを制し、4人目のマルチ優勝者となった小祝は「(2勝目までは)1年以上たったが、長く感じた。強い選手はたくさんいるので、もっと練習しなければ」と話す。
次週は今季ツアー初メジャーの日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯。プロゴルフの世界で初優勝より難しいといわれる2勝目を手にした小祝さくらは、さらに大きな花を咲かせる可能性を秘めている。(竹内 達朗)
◆小祝さくらの優勝用具
▽1W=スリクソンZ785(ロフト角9.5度、シャフト長さ45インチ、硬さS)▽3、5W=スリクソンZX▽3、4U=スリクソンZH85▽5~9I、PW=スリクソンZ585▽51、58度ウェッジ=クリーブランドRTX3▽パター=テーラーメイド・スパイダーX▽ボール=スリクソンZスターXV(パター以外は住友ゴム工業)
◆小祝 さくら(こいわい・さくら)
▼生まれとサイズ 1998年4月15日、北海道北広島市出身の22歳。158センチ、58キロ。
▼ゴルフ歴 8歳の時、母・ひとみさんとレッスンに通い始める。「まさかプロになれるとは思わなかった」(ひとみさん)。
▼アマ戦績 10、12、13、14年北海道ジュニア優勝。14年北海道女子アマ優勝。
▼プロテスト 飛鳥未来高卒業後の17年にぎりぎりの19位で一発合格。
▼初優勝 19年7月のサマンサタバサレディース。98年度生まれの「黄金世代」では8人目の優勝者となった。優勝スピーチでは「お疲れサマンサ」と大会名をかけたダジャレでギャラリーを沸かせた。
▼安定感 初のツアー本格参戦となった18年、いきなり7500万7442円の賞金を稼ぎ、賞金ランク8位に躍進。19年も8298万2071円の賞金を獲得し同8位。
▼尊敬する選手 同じ高校の先輩の藤田光里(25)。
▼趣味 ライブ観賞、食べること。
▼家族 母と弟。