驚異のエージシューター田中菊雄の世界160 武藤一彦のコラム


 「エージシュートはクールである」―ジャック・ニクラウスに代わって新帝王の座についたトム・ワトソンが、エージシュートの面白さを、「クール、素晴らしい」とその魅力を語ったことは前回、触れたが、今回は日本プロゴルフ協会(PGA)のエージシュートへの取り組みについても触れておこう。周知のとおり50歳以上、80歳過ぎまで、往年のツアープロが年間30競技を行うシニアツアーは、エージシュートの宝庫だ。
 日本プロゴルフ界最初のエージシュートは中村寅吉が1981年、65歳の関東プロシニア(鳳凰GC)を65で回ったのが日本プロゴルフ史上最初の公式戦エージシュート。協会主催の伝統の大会としては、ゴルフ競技の先進国、欧米でもなかった公式戦エージシュートとして欧米でも注目、歴史的快挙と称賛された。
 この記録は2017年、初見充宣が64歳の関東プログランドシニア(箱根湖畔GC)を63で更新、2020年現在、最年少記録である。
 エージシュートは、年齢をハンデキャップのアンダーハンデ競技。高齢化社会を元気で長生き、そのバロメーターとして注目の最年長記録は、1993年、80歳の上田悌造が、日本プロゴールドシニア(日野GC)を80で回ったのが“80歳時代”の幕開け。この記録は2005年、84歳の小針春芳が関東プロゴールドシニア(サンヒルズCC)を81、エージシュートに3アンダーという快挙で更新した。小針はその生涯で23回のエージシュートを出したが、最後のエージシュートは85歳の関東プロゴルフゴールドシニア選手権(キングフィールズGC)を84の1アンダー、この記録が現在の最年長記録だ。
 そして、注目の最多記録は?エージシュート記録は2020年シーズン終了現在、中村寅さんの第1回から39年間で延べ512回のエージシュートが記録されているが、最多は、古市忠夫の33回である。次いで小野光一26回、3位は小針の23回。以下、小川清二、22回、謝敏男、高橋勝成、陳清波が20回を記録。
 ちなみに青木功は07年、65歳の日本シニアオープン最終日(熊本中央CC)に65をマーク、エージシュートに加え10打差を逆転して優勝以来、9回である。さらに付け加えるなら、生涯現役にこだわるジャンボ尾崎は、66歳で迎えたレギュラーツアーの2013年、つるやオープン(上の原CC)初日に62、ツアー史上初のエージシュートを達成した。

 

 さて、田中さんである。プロとアマ、競技とプライベートラウンドの違いはあるが、プロの最年長記録85歳を、1歳上回る、今季86歳は、年間、300余日をラウンド、200ラウンドをゆうに超えるエージシュートを達成中。プロたちが高く評価し驚異の声を上げるゆえんである。エージシュートは2022年2月20日現在978回に達した。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。86歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。