へそ曲がりシニア記者が、中・元調子の最新シャフトを試してみる企画の後編。今回、試したのはフジクラの「ONYX Speeder(オニキス・スピーダー)」。このシャフトはキックポイントをどうこう言う以前に、「重くて軟らかい」という、これまでになかった特性で注目されている。流行の真逆をいくシャフトの実力は?
これまでのシャフトは、重いものは硬く、軽いと軟らかかった。この常識を覆したのが、いわゆる「高弾性」シャフトだ。
グラファイトシャフトは、カーボン繊維のシートを巻き、焼き固めて作るため、巻くシートの枚数で重さ、硬さがほぼ決まる。しかし、高弾性シャフトは弾性が高い(つまり硬い)カーボン繊維を使うため、少ない枚数で剛性を確保でき、軽くて硬いシャフトを作ることができる。クレイジーなど中小のシャフトメーカーがこぞって作っているのがこれで、ヘッドスピード(HS)の速い人でも軽いシャフトを使えるため、合う人は確かに良く飛ぶ。
「重硬」「軽軟」「軽硬」とマトリクスが埋まって、残るのは「重軟」だが、ここはどこのメーカーも手を出そうとはしなかった。そもそも、重くすると普通はHSが落ちる。さらに重いシャフトを使える人なら、何も軟らかくする必要はない―というわけだ。
前置きが長くなった。その空いている「重軟」を目指したのが「オニキス」だ。メーカーによると、超高弾性90トンカーボンを全長に使用しつつ、「エア・スピーダー」で培った技術を応用。軟らかいながらもコシがあり、大きくしなって、大きく戻るシャフトを実現したと言う。
東京・木場のフジクラゴルフクラブ相談室木場店で試してみた。先に「PLATINUM Speeder(プラチナム・スピーダー)」を打ってみる。オニキスと同時発売されたカスタム用シャフトで、こちらは「軽硬」。高弾性らしく長尺(46インチ)で、分かりやすく先が速い。一般に売れているのは、こっちのほうだ。
さあ、オニキス。試したのは6のSR。68グラムで、振ってみると重さを感じる。元調子らしく切り返しで手元からグーンとしなって、インパクトでさらにヘッドが走る。「ダブルキックで、先調子でもありますからね」とフィッターの高尾光昭さん。打ちやすいなと思ったら、HSは普段より約2メートル速い45。スピン量は1700~2000、サイドスピンはなんと50だった。
切り返しのタイミングが早くなって、手でこねてしまうのが記者の悪い癖だが、オニキスは軟らかい分だけ、トップで自然にためができる。さらに、ある程度の重量感が、勝手に悪さをする手の動きを抑えてくれる。
「一般に合うのはプラチナムだと思いますよ。でも、オニキスが合う人は必ずいます。軟らかいシャフトを振ると、スイングも良くなりますしね」と同社マーケティングチーム主任の甲斐哲平さん。理論上は軽くて長いほうがHSは上がる。しかし、クラブを振るのは機械ではなく、あくまで人間。振りやすさは、理論とは別のところにあるのだ。(鈴木 憲夫)
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