優勝カップを手に笑顔の山下美夢有（カメラ・小泉 洋樹）
◆女子プロゴルフツアー 伊藤園レディス 最終日（１３日、千葉・グレートアイランドＣ＝６７４１ヤード、パー７２）
２打差２位から出た山下美夢有（２１）＝加賀電子＝が１バーディー、ボギーなしの７１で、逆転の今季４勝目＆通算５勝目。今季からツアーの指標がポイント制となり、初年度に２１歳１０３日の史上最年少（８８年ツアー制施行後）で年間女王に輝いた。シーズン獲得賞金２億円も突破した。
緊張の中で迎えた最終１８番、３メートルのパーパット。山下がカップ目がけて強気に打った、この日３５パット目は一直線にカップに吸い込まれた。今季４勝目で年間女王に輝き、右拳を握った。優勝インタビューで「たくさんの応援があり、ここまで来られた」と涙。会見でも「家族が私中心に動いてくれて、きょうだい（弟、妹）にも迷惑をかけている。サポートのおかげで強くなれた」と再び声を詰まらせた。
２打差を追った最終日は強風で耐える展開だった。８番で１０メートル以上のバーディーパットがカップを１周して外れると、両手でパターを高く上げて思わず苦笑い。「耐えてチャンスが来るまで待とう」。１５番のバーディーで、２１歳１５６日の最年少賞金女王の記録を持っていた上田、岸部と並んだ。「接戦なので落とせない」とした一方、「緊張感を楽しんでプレーした」と、パットに苦しみながらも７１で粘り勝った。
１０月のマスターズＧＣレディースで５か月ぶりに予選落ちすると、即座に手を打った。コーチの父・勝臣さん（４７）と６月のサントリーレディスの優勝コースでもある兵庫・六甲国際ＧＣでスイングの修正に努めた。「しっかり見てもらえた。一番心に残っている」。前週５位で女王に王手をかけ、２試合を残し、一気に決めてみせた。
今季３１試合中２０試合でトップ１０入り。ショットの精度を示すパーオン率７４・８３％（２位）と安定感が光った。昨年までは「揚げ物を食べてしまったり」と課題だった食生活を、後半戦から栄養士をつけて改善した。「しっかり強い体で戦えた。ラーメンとか好きだけど、体の面でプレーに影響すると言われてやめた」とグリーンの外でも高い意識を心がけている。
シーズンの自己採点は「９０点」だが、決して満足していない。「優勝しても課題はある。ショートゲームの技術面も足りない」と高みを見据える。昨年全米女子オープン覇者の笹生優花、早くから活躍する西郷真央と同期の２１歳は「私らしく、しっかり自分のいいところを見てやってきた」と胸を張った。歴代女王で“最小”、身長１５０センチの小さなゴルファーが女子ゴルフ界の歴史に名を刻んだ。（岩原 正幸）
◆山下 美夢有（やました・みゆう）２００１年８月２日、大阪・寝屋川市生まれ。２１歳。５歳から父の影響でゴルフを始める。大阪桐蔭高３年時の１９年に全国高校ゴルフ選手権で優勝。同年１１月のプロテストに合格し、昨年４月のＫＫＴ杯バンテリンレディスで初優勝。今年５月のワールドレディスサロンパスカップでメジャー初優勝。ツアー通算５勝。１５０センチ、５２キロ。家族は両親と弟、妹。